雲凪番外編[お見合い開始4]






「どうして肝心なことを早く言わないの。」

「だって…タイミング逃したから。」

「はぁ……。」

聞いて呆れる。
雲雀は大きな大きなため息を吐いて肩から力を抜けるのが感じられた。

恋人、いるとは知らずに進んだお見合い話。
よく承諾したなと彼女を見ると、いたって真面目な顔をしながら雲雀に問い掛けている。




「何で僕との見合いを受け入れたのさ。」

「わからない、けど。」

「けど?」

「今まで会ったことが無いから、こういう形でしか会えないような気がして…。」

「…へぇ。」

「で、でも恭弥はそんな悪い人じゃないってわかったし。」

「…君の中で僕のイメージって何なの。」

「噂通りなら怖い人。」

「別に間違っちゃいない。」

雲雀は渋い顔をしながら自分の噂が流れている事に不満を抱いた。
一方凪は婚約が決まってしまうかもしれないという緊張が解れたのか、どんどん自分から話すようになってきた。

前回の骸の件、女性は警戒心が無くなるとよく喋るという事は勉強済み。
数時間前とは違う凪が別人のように思えてくるほどのギャップ。

…まぁ、わりかし悪くはないよ。




「君さ、異性と一緒にいる時緊張しすぎなんだよ。」

「……うん。」

「警戒心強すぎ。」

「それは貴方に言われたくない。」

「僕は警戒というより圧倒だからね。」

「…怖い人。」

「今更。」

「あれ、恭弥…首に切り傷。」

そっと手を伸ばして雲雀の首に手が触れる。
さっきの骸とツナとの戦いだろうか、大方骸の槍で怪我をしたんだろう。

雲雀はそんな小さな怪我では気にしない。
しかし彼女は気遣う性格なのか、かなり優しさもあるらしい。
擦った程度の傷を見て酷く焦っている。

雲雀は伸ばされた手をとって凪の体を引っ張った。




「え、ぁ……。」

「君さ、僕に抱かれるって思った時そんなに嫌だった?」

「え…?」

「だって力一杯目をつぶって物凄い顔になってたじゃない。」

「あ、あぁ……それは。」

これ、
そう指を差された先には髪飾り用の簪(かんざし)。
1度押し倒されたので髪の毛が乱れてきたが、さっきは簪が髪を引っ張って痛かったらしい。

成る程、と納得した雲雀は赤い簪を取って髪をおろさせる。
ぱさりとほどかれた髪を指で遊んだり軽いキスをしたりと(骸の忠告を無視して)ちゃちゃいれをやりたい放題やっていた。
凪は雲雀の行為に恥ずかしくなって彼の手を握って止める。




「……もうあんな顔、しないよね。」

「?」

「僕さ、雰囲気とか気にするタイプだから。」

「恭、弥…?」

「婚約の件、僕は構わないよ。」

静かに凪の目の前の影を暗くしていく。
あえて抱き締めようとはせず、彼女の肩を掴んでいつでも逃げれるようにして目を閉じた雲雀。
凪もつられて目を細めると、完全に閉じる前に熱が触れた。

逃げないということは、いいんだね?
戻る
リゼ