雲凪番外編[お見合い開始]




















―――――‐‐…‥‥



「雲雀恭弥。」

「凪‥です。」

ぎこちない雰囲気が、この場の空気をさらに重くする。
畳のにおいに包まれる和室。
雲雀と凪は机を挟んで、お互いに向き合いながらお見合いが開始された。

ちなみに凪の保護をしようとしていた約2名。
本来追い出されているはずだが、凪のお願いによって離れた部屋に閉じ込められていた。




「あの…。」

「何。」

「本当に雲雀恭弥‥なの?」

「偽物っているのかい?」

「ううん…。」

「そう。」

両者とも、自分から積極的に話そうとする人間ではない。
なので話が途切れるのは想定内だった。

その2人をよく理解している社長は、幹部と共に閉じ込められている。
表向きには反省しているように見えるが、




『骸様も…つい最近知り合ったって言ってたから‥。』

『人の見合いに盗聴器をつける知り合いなんていないよ。』

「貴方が心配させているんです。」

「本当だよ。」

ちゃっかり聞いている。

数分前。
屋敷内での戦いの際、ツナは雲雀自身に盗聴器を付けようとしていた。
しかし、これもまた感付かれてしまい、失敗に終わった。
かと思ったが、標的を変えるという思考が頭を過った。
ツナは凪をかばうようにして抱き締めた瞬間、胸あたりの着物の裏地に盗聴器をつけた。

これならバレないと思ったのも束の間。
油断したツナは雲雀の餌食になってしまった。
その後、喧嘩は凪と草壁によって何とか終わった。


という事を前提に。
監禁されている部屋ではツナと骸、二人の携帯を使ってそれぞれ盗聴器から部屋の内部の会話を聞いていた。




「でも雲雀さんと凪ってコンビもすごいと思うよ。
どっちも滅多に会えない、というか会わない二人だし。」

「ですよね。
まぁ雰囲気からして似た者同士、いいカップルではありませんか。」

「それめちゃくちゃ失礼だろ。」

「今更ですよ。」

見合いとは逆に和やかな雰囲気、クハハと笑いながら骸はツナとの会話を楽しんでいた。
何だか(色々と)苦労人であるお互いは話がよく合う、監禁されているとは思えないほどの平和さに、外で見張っている草壁はため息を吐きながらも襖の前に座っていた。




「何かしゃべり過ぎたら地味に喉が乾いてきたな。」

「じゃぁお茶でも頼みましょう、
草壁さん。」

「…何でしょうか。」

「お茶に和菓子をお願いします。」

「なっ
あなた方監禁されているという戒めを少しは…、」

「六道骸様。」

「あぁ、いつかの女中さん。」

「和菓子に緑茶、お持ちしました。」

「骸ってば人脈広いなー。
お、ありがとうございます。」

「な、…貴方も恭さんに歯向かうつもりですか。」

「歯向かっているなど恐れ多い、私はただ骸様との再会を果たしたまでですので。」

「そうですよ。
あ、草壁さんもどうですか?」

「い‥いえ、私は…。」

「雲雀さんだけ楽しむのは不公平ですよ。
何なら女中さん全員連れてきてみんなで談話でもしようよ。」

「そうですね!
では私は他の者を連れてきます。」

「ちょ、花見じゃないんですよ沢田さん!」

「まぁまぁ堅いことは言わずに。」

「可愛い女中さんに囲まれて、たまにはいいじゃないですか。」

結果。
草壁の理由はツナと骸の誘いに負けてプチ監禁からお花見大会並の座談会に。
気が合う人同士はコンビネーションが強く、人を誘導させるのが上手くなる。
今回の件で、草壁はよくわかった。

無論、雲雀と凪の盗聴はとうに忘れさられている。
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