1/3





「骸君、そんなにしがみつかなくても逃げたりはしないよ。」

「…………。」

外は外灯や看板も明かりが消えており、本当に真っ暗な世界。
骸は白蘭の腕を抱きながら1歩、また1歩と歩いていく。
骸はどうも白蘭から離れたくないらしい。
好かれているのか殺そうとしているのか、コンパクトに畳まれた槍を見ればすぐに理解できた。





























――‐‐……‥‥

ホテルでチェックインを受け、ビップ級のワンルームへと導かれる。
ビップしか泊まる部屋がなかったのもあるが、高級さが無いところで寝たくないのもあったので好都合。




「‥凄過ぎです。」

部屋に入ったと同時に煌びやかな装飾品達が迎えてくる。
あまりの眩しさに骸は目を細くしていると、白蘭にエスコートをさせられてベッドに着いた。




「今は月明かりだけでいいよね。」

電気消すよー、と言って中央にあるシャンデリアのギラギラとした光が消える。
全ての光が消え、月明かりの素朴な光だけが部屋を照らした。




「あ、骸君シャワーどうする?」

「………。」

たっぷりの沈黙の後、骸はそそくさとバスルームへと向かった。
まぁ素直で可愛いところも女性の魅力かな、と白蘭は考えた。
しばらくしてシャワーの音が部屋に響きわたる。

そして白蘭はふと思った。




「あ、そういえば。」

着替え、大丈夫かな。

別に旅行しに来たわけでもなさそうな骸は、さっきまで振り回していた槍だけが唯一の所持品。
着替えどころか荷物すら持っていない。
いったい彼女は何しにきたのだろう、
疑問が重なる中、白蘭はホテルの売店で着替えを買いに行く。

…さすがは高級ホテル。
着替えも売っているし、売店も開けてくれた。




「店まで開けてもらったうえに品物選びだなんてさ。
…なんだか悪いね。」

「いいんだよ、下手に選ぶよりはアタシに任せな。
男には難しいうえに恥ずかしいだろうね。」

女性の着替えなんて白蘭は知識がないため、売店のおばちゃんに任せて選んでもらった。
まぁ、ズボンなら買わなくていいだろう。
さっき着てたので十分だから。




「そんで、奥様が着替えを忘れたのかい?」

「えぇー…っと、まぁ、そんなものかな。」

「ありゃ秘め事かい、怪しいねぇ。」

本当は違うのだけれど。
っていうか着替え忘れてホテルに泊りってどうかと思うけどさ。
しかも怪しいって何?

それでも優しく大変だったね、と笑顔で品物を差し出す売店のおばちゃんに、一礼をして部屋へと戻った。
こういう場面で、人は温かいものだなと改めて感じる。
白蘭は少し機嫌がよくなった。




「ただいま…って、あれ?」

扉をあければシャワーの音。
まだ入っているみたいなので少し安心した。




「骸くーん、着替えは洗面所においてくからねー。」

そう言うとシャワーのコックをひねる音がして、白蘭は慌てて浴室を後にした。
生憎、女の裸を見る趣味は持ち合わせてはいない。

着替えついでに買ってきたお酒をグラスに注いで、骸が来るのをリビングで待った。
数分経ち、背後からスリッパの擦れる音がした。




「どう?着心地は…、」

そこに立っていたのはワイシャツ1枚の骸。
下着の色が黒なのでショーツが透けて見えた。
一方ブラジャーはつけていないのか、ピンク色の乳首がワイシャツごしから強調されている。




「む、くろくん…ズボンは?」

「戦ったときに血が付いてるので洗濯してもらいます。」

「あぁ、そう。」

骸の襲ってくれんばかりの格好に、白蘭はギクシャクとしながらバスルームへと足を運ぶ。
いや、今のはちょっと危なかった。













―――‐‐‐……‥‥



「……ん、」

生暖かいシャワーを頭からかぶり、汗を洗い流す。
今日は変な汗をかきっぱなしだ。
何故あの骸とか言う女を勧誘したのか。
いや、それは相手が離れてくれなかったからで。
自分は決して誘ってはいない。
むしろ誘ってるのは骸の方だ。
結果、これから理性との戦いが始まるんだろうなと白蘭は考える。

しかし微妙な暖かさは眠気に誘われるため、さっさと浴室から出てバスローブを着た。




「さーて‥早く寝よ。」

意を決してベッドへと向かえば、ベッドの上で横になる骸の姿があった。
しかも仰向け。




「骸君‥風邪ひくよ。」

シーツをかけてやると、規則正しい寝息が聞こえてくる。
疲れたもの同士、白蘭も隣のベッドで寝ることにした。




「じゃ‥おやすみ。」



[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ