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綱吉は不機嫌なまま席に戻り、授業の支度を始めた。
ジョットを嫉妬させるつもりが、仕掛け人の綱吉が不機嫌になってしまう。
この結果に、ジョットは思わず笑ってしまった。
「母性本能がくすぐられるとは、こういうことか。」
要は世話がやける子供、だな。
再びチラッと綱吉の方を見る。
すると綱吉はジョットの視線に感付き、先ほど以上に頬をぷーっと膨らませた。
この反応が子供らしい。
ジョットが女子たちの発言に納得していると、授業開始のチャイムが鳴った。
「俺も、1回ぐらいカワイイことをしてみるか。」
――‐‐……‥‥‥
「まったく、
俺の120円を無駄にしてっ」
綱吉は自販機の前で昼休みに起こった出来事を一人で呟く。
あれから5限、6限が終わって放課後になった。
その間、綱吉を気にかけた女子生徒が「買ってあげようか?」と言ってくれたが、綱吉は断った。
自分の中のプライドが、ふざけんなと叫んでいたからだ。
しかし、今になって断ったことを後悔している。
「はぁ‥。」
頑固で意地っ張りで子供っぽいのは自覚してる。
でも、感情に任せて自分の利益を自ら潰すのは良くなかった…かな。
「ジオみたいに、もっと冷静に考えないとね。」
綱吉はポケットから出した小銭を入れて、どれを飲もうか考える。
アセロラはさっき飲んだから良いとして。
コーヒーのブラックは無理だし、隣のミルク入りのヤツも後味が苦かった。
それならココアを飲めって話だけど季節が違うし、あとはオレンジにリンゴに野菜に‥。
「どうしよう。」
「俺はコレが良いと思うぞ。」
「え、ちょッ!」
綱吉が悩んでいると、背後からいきなり手が出てきた。
その手はあるボタンをピッと押して、ガコンと落ちてきた紙パックを取り出す。
「ジオ何して、ってまたアセロラ!?」
「また飲みたくなったからな。」
「さっきって、
さっきも今も俺の金なんだけど!」
「細かいことを気にすると長生きできないぞ。」
「ジオよりは長生きしてやるわ!」
「ほう、
じゃぁ俺が長生きした時は、また何かしら奢ってもらおうか。」
「ジオが長生きしたってことは俺が死んだってことだよね?
奢れないじゃん。」
「心配するな。
お前の遺産である貯金箱を貰う。」
「うわ最悪だよこの人。」
綱吉はジョットの腹黒さを改めて思い知らされる。
一方ジョットは、綱吉の目の前で紙パックにストローを刺した。
「え、」
まさかこれは、
と、思ったら案の定。
ジョットは無断で、しかも綱吉の目の前で堂々とアセロラを飲み始めた。
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