お互い多少はズレる









「くすぐったい。」

「そこは我慢しろ。」

「相変わらず香水がキツいんだけど…。」

「入浴剤。」

冬の乾燥肌に潤いを与えるなんとかエキス配合っていう薬品。
パッケージが良いからって理由で買ってきたんだろお前が。

先程から綱吉の首筋に軽いキスマークをおとしているジョット。
ほのかに彩る紅色は、愛情の印。
消えたらまた付けられる簡単な虫除けみたいなもの。




「吸血はやめてね。」

「何でだ。」

「地味に痛そうだから。」

「ほう‥‥。」

まぁ確かに。
普通の人間の歯で吸血なんてやったら、なかなか皮が破けないだろう。
仮に破けたとしても出血の量は半端じゃない。
牙なんて生えてないのだから。

でもそんなこと言われたら逆にやりたくなるのが人間の本能だろ。
わざと歯をたてて綱吉の首筋に触れてみた。
そしたら緊張したみたいでろくに呼吸もできていない。

全てを受け入れるのがコイツのいいところかな。




「っ…。」

「俺がそんなことするわけないだろ。」

「んっ」

ガブっと噛み付かれる、と思いきやチュっと優しく吸われた。
考えていたものとは違う感触。
思わず吐息をもらしてしまった事に恥じらい、綱吉の顔はみるみる赤くなっていった。




「このぐらいだな‥。」

ちりばめられたキスマークを見つめて満足気なジョット。
対して不満そうな目をしている綱吉は、ジョットの何もない白い首筋を見ていた。

これだけ対称すぎると、逆に真っ白な方がおかしく見えてくる。




「ずるい。」

「何だ、お前もやってみたいのか?」

「こう見ると不公平だし。」

「20年早い話だ。」

「にじゅ…。
ジオって意外に腹黒いっていうか悪趣味だよね。」

「あまり挑発すると手を出すからな。」

「今の手を出したうちに入らないわけ?」

「愛撫とセックスの境目がわからない子供に理解できるわけないだろ。」

「軽くバカにしてるよね。」

「どうだろうな。」

起き上がったジョットは不適な笑みを見せながらベッドへと向かう。
ホットカーペットが敷いてある寝室とは違う方向だったので、綱吉はソファーに寝転がりながら疑問に思った。

冬場ではホットカーペットで温められた布団で寝たい。
綱吉の発言により渋々と条件を受け入れたジョットだったが、とうとう堪えきれなくなったらしい。

やはり自分の好みを相手にわかってもらうのは大変だ。




「好みにも個人差ってあるよね。」

「いや、お前がホットカーペット消さずに寝たのが原因だぞ。」






(あれ、消してなかった?)
(昨日大火事の夢を見た)





超庶民的なジョットさん。

10,01/18
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