Berry×Berry
「ジオの馬鹿ぁ!
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬ッッッ鹿ァあ!!!」
「別に果物1つで価値観は変わらないだろ。」
「変わりますーッ!!
そこ大事ですからぁっ」
ギャーギャーと騒ぐ綱吉を隣に説教を受けているのはジョット。
よく見れば半分泣き目、そして頭から湯気が出そうなくらい顔が真っ赤になっている。
…ちょっと危ないな。
だがすぐに現実に戻されるのは綱吉の訴え故、昔の可愛さから自分の意見が持てるようになったのは成長と言っておきながら、少し喧しい。
「たかが苺1つにそんなに怒るものか?」
「そりゃ苺が無いショートケーキって何?!
ただの生クリームが塗ってあるスポンジケーキじゃん!
俺が最後まで残しておいたのにそれをジオがっ」
「最後の楽しみにして皿の端にどかしたお前が悪い。」
「ちッがぁああうー!!」
白いお皿の端でぽつんとある赤い苺。
隣で読書をしていたジョットの目に止まったのが運の尽き、苺を綱吉の目の前で口に入れてしまった。
別にわざと綱吉の目の前で食べたわけでは無いけれど、気付けばフォークが小さな口に入ろうとした自然な流れに、瞬時亀裂が入った。
ぷちぷちとした食感、甘い口溶けを味わいながら、じわっと泣きそうな目でジョットを見る視線が痛い。
時が止まっている異空間が隣に広がっているような気がした。
「こーいうさぁ、子供の夢壊すのやめよーよ。」
「お前に夢なんてあったか?」
「楽しみが1つ消えたぁ。」
「…じゃぁほら。
俺のラズベリーでもやるから。」
「酸っぱいもん。」
「(酸っ…)
ビタミンСとらないとニキビ治んないぞ。」
「…………。」
「文句があるなら顔でぶつぶつ言わずに口で言え。」
最近食い過ぎなのか運動不足なのか寝すぎなのか、綱吉の顔にはちらほらニキビができている。
なので自分のタルトの上にあったラズベリーを差し出すが不貞腐れモードなので素直に言うことを聞かない。
酸っぱいって何だ。
梅干し食べれるんだろお前。
「…それタルトのやつじゃん。」
「早く食べないと俺が食うぞ。」
「…………。」
「そうか、じゃぁいいんだな。」
ぷつりとフォークを突き刺してラズベリーを自分の口へと運ぶと、突然ラズベリーが消えた。
隣に視線を変えれば、綱吉がニッコリしながら口をもぐもぐさせている。
「お見事。」
「別に、ラズベリーには罪無いから。」
「はいはい。」
代わりにジョットはブルーベリーをフォークにのせて食べようとしたが無くなる。
何なんだコイツ。
結果、(腹いせに)相手の果物を全部平らげた綱吉は、気を許してしまった事に気が付いてジョットに背を向けるように座り直した。
その様子を見たジョットは過去の経験からして、この場合はあともう10分もしないうちに機嫌を直すだろうと確信する。
手を伸ばして綱吉の頭を撫でたり髪を梳いたり、相手の御機嫌を伺いながら触れた。
するとワイシャツの端を引っ張ってちょいちょいとジョットに絡んでくる。
あともう少し。
「ツナ。」
「何?」
「寄り掛かりたいなら素直にこっち来い。」
「…………っ」
「よし、素直になったな。」
In Fact
(本に八つ当りなんてお前らしい)
(だって本は何も喋んないじゃん)
(…そうだな)
フリリク企画に提出。
09,02/28[完成]
09,06/05[更新]
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