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いつもなら時計の針の音が聞こえる。
だが今日は雨の音にかき消されて聞こえない。




「…………。」

忠告はしてみたものの、やはり綱吉は学園には顔を出さなかった。
さすがのジョットも呆れ、今は書類に目を通していく。

停学か退学処分。
本当なら綱吉はもう学校にはいない。
だが停学や退学を指示する会長は、仕事と勉強の両立に忙しいため構っている暇はない。
朝一で忠告しに行っただけでも有り難いと思ってほしいぐらいだった。
だがジョットは、来月中に綱吉を名簿から消してやると決めていた。




「……はぁ。」

生徒会室とは異なる生徒会会長室というものがこの学園にある。
生徒は無論、教員も立ち入ることはできない、いわゆる会長だけが所有できる空間。
仕事の関係で下校が夜中になる場合など、部屋で寝泊りできるようになっていた。




「…にしても凄い雨だな。」

誰が見ても帰りたくなくなる。

ギィと椅子を回して景色を見れば、雨が窓ガラスに叩きつけている。
一方部屋の環境を見渡せば床暖房装備の暖かい空間。
外の世界とのギャップを不思議に思いながらも、曖昧にしか見えない道路や校舎を見た。

傘を差すのもやっとであろう会社帰りのサラリーマン。
せっかくの服がぐちゃぐちゃになっている若い女性。
そしてカバンを頭にのせて傘代わりにしている女子生徒。

そこでジョットは目を止めた。




「……………。」

茶髪にピアス、それにあの制服。

傘をさしている人々に混ざりながら、1人だけ傘をささずに走っている少女。
雷が鳴ると足がつっかかり、あやうく転びそうになっている。




「………。」

何なんだ。

ジョットは眉間にしわをよせて大きいため息をついた。
もう一生関わりたくなかったが話を付けるのには調度良い、そう考えたジョットは廊下に出る。




「…鍵は閉まっているはずだが。」

ジョットは暗い廊下をスタスタと歩き始める。
そこらへんの学園とは違って、学園全体が清楚であるのでそれなりに不気味さや恐さはない。
だが今にも何かが出そうな雰囲気は、雷が作り出していた。



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