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※仔獣高銀、仔銀♀注意
日当たりのいい場所でくぅくぅと寝ていた。
特にやることもなく、畳の上でゴロゴロと寝転んでいたらいつの間にか寝ていたようだ。
(こんな日も悪くないか…)
やることが無けりゃ寝る。
それは黒い獣、もとい晋助が半分獣として産まれてきてから日常茶飯事となっていた。
引き取られてからは、ある程度のベンキョウなどもしているが、それ以外は自由気ままに過ごしている。
そして今日も、特に面白いこともなく過ごす。
どのくらい寝ていたのか。
さらさらと通る風が少し冷たいと思えてきた晋助は、目を擦りながらゆっくりと起き上がる。
そして空いた窓を閉めてまた寝転がった瞬間、庭から感じた視線にパチリと目を開く。
「……………。」
「……………。」
庭の隅に、何かいた。
窓を閉めてしまったので、においも何も確認できないが、同い年ぐらいの白い子供がいる。
(誰の庭だと思ってやがる…)
心の中でそう反発する。
が、今は眠い。
この庭は俺の縄張りだとか、堂々入ってきてんじゃねぇとか、そもそも誰だテメェとか、
言いたいことは山ほどあるが、今はとてつもなく眠かった。
「……………。」
仕方ねぇ、今回だけは見逃してやる。
まどろみの中、晋助は目を閉じて寝返りを打った。
そして再び夢の世界に入る。
「…………。」
「…………。」
「……………。」
が、誰かの視線の中では寝られなかった。
それどころか、庭の砂利を踏む音がどんどん近くに寄ってくる。
薄目で確認すると、先ほどの白い子供が窓越しから晋助をジッと見ていた。
そして何も言わない晋助を気にしつつも、ゆっくりと窓を開ける。
そういや鍵を閉めていなかったと心の中で舌打ちをしながらも、カラカラと窓が開いた。
それでも何も反応しない晋助の様子を見つつ、ついに家の中へと入ってきた。
(こいつ…マジか)
眠気との戦いの中、晋助は呆れて何かを言うのも面倒になった。
部外者を家の中に入れるなんて言語同断。
しかも開けた窓をご丁寧に閉めるもんだから尚更わけがわからない。
すると不意に、幼い手が高杉の黒い耳に触れた。
「………………。」
「………………。」
さわさわ、ふにふに。
柔らかく優しく触れてくる手は、どこか獣の扱いに慣れている。
そしてこの匂い。
このまま放っておけばコイツはいなくなるか。
むしろ怒鳴った方がいいのか。
でも敵ではなさそうだ。
晋助はゆっくりと目を開けて、間近で初めて白い子供を見た。
「ぁ………。」
「……………。」
視線が合ったことで揺れる赤い目。
無造作な銀髪、青い着物。
そしてぴょこんと出た白い耳と白い尻尾。
晋助は離れようとする手を取って優しく引き寄せた。
「……?」
「……………。」
隣で横になった白い子供は、不思議そうに晋助を見つめる。
そして晋助はふわふわとした銀髪を撫でて、そのまま目を閉じて寝てしまった。
こんなに強烈な睡魔に襲われるのは初めて。
というか見ず知らずの存在を前に寝れてしまう自分が凄いと思った。
それもこれも、同族に会えた賜物か。
(俺と、同じ…)
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