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「……誘拐?」

「可愛い顔をしてたから。」

「首輪ついてるぜ。」

「僕にしがみついて離れないんだ。」

恭弥が猫を拾ってきた。
真っ白い大人の猫。

仕事中だったディーノは眼鏡を外し、顔を近付けたが猫はそっぽを向いた。
「嫌われてるね。」なんて言われたが猫の好みなんてわかるわけない。




「しばらく飼うから違う部屋で寝て。」

「それは別に構わないが、本当に飼えるか?」

「猫は嫌いじゃないからね。」

そう言って雲雀が寝室へと歩きだすと、猫は後ろに付いていった。
よほど好かれているのか、そう思いながらディーノは寝室とは逆の方向へと歩く。
仕事があともう少しで終わりそうなので、早く済ませて寝たかった。
睡眠不足の目に眼鏡は辛いが我慢我慢。
気合いを入れ直したディーノは、再びパソコンに向かって仕事を続けた。





























――‐……‥‥‥


あれから数時間。
さすがに限界が来たディーノは、目元を擦ってあくびをする。




「あー‥しんどいー‥。
もうボスの座は誰かに譲っちまおうかなー。」

だがそんなことしたら俺の作り上げてきたもんが大きく変動するか。
しかも今譲ったらロマーリオが代理になるかもしんねぇ。
それで俺より活躍されちゃ虚しいのは俺か。
やっぱやめた。

飲みかけのコーヒーを一気に飲んで眼鏡を外す。
しばらく指で目を押さえていたが、何かの気配を感じた。




「…………。」

うにゃ。

ゆっくり目を開ければ、クリクリとした目と視線が合う。
書類の上にお座りしている猫は、さっき雲雀が拾ってきた子。

いや……うにゃ、じゃないだろ。




「どうしたんだ。」

ディーノが顎を撫でればゴロゴロと喉を鳴らす。
先程まであんなにツンツンしていた猫は、逆にディーノに擦り寄ってきた。

だがこの猫の世話は雲雀の仕事。
甘えてくる猫を持ち上げて、雲雀のいる寝室まで送った。
ベッドに丸くなっている雲雀は爆睡していて起きない。
仕方ないので猫はソファーの上に置いた。




「じゃ、おやすみ。」

ディーノがそう言って部屋を出ると猫はその場で丸くなる。
夜行性にも関わらず、そのまま瞳を閉じた。



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