Weak point and Habit







川のそばに1本、
見事に咲く桜の木がある。
そこはたいてい見物人で盛り上がっているため、人が絶えることはない。
だが今日は珍しく1人もいなかった。

こういう時は、誰だって夜桜見物とかしたくなる。
しかしこの地域を管轄している人間は許してはくれなかった。




「まったく、
夜桜ぐらい楽しませろよ。」

「寄り道してる口が言うもんじゃないね。」

「はいはい。」

ディーノはそう言って軽くあしらう。
だがその態度が逆効果だったらしく、この地域の風紀を取り締まる雲雀は、静かに武器を構えた。




「最悪、今日は買い食い。」

「お前さ…俺より並中の生徒の処分をしてこいよ。
買い食いしてたヤツらなんて、さっき普通に歩いてたぜ?」

「貴方のだらしない性格が治ったらね。」

「お前が勝手につっかかってくるんだろ。」

「僕はまだ貴方を咬み殺していないんだ。
勝ち逃げなんてふざけてるよ。」

「別に勝ち負けにこだわらなくても…、」

「ずいぶん余裕なんだね。」

そう言って、雲雀はディーノに向かって突っ込んだ。
一方のディーノは、近くのコンビニで買った唐揚げを片手に、雲雀の攻撃をかわしていく。
さすがに相手が悪いので鞭を使いたいところだが、戦う気力は無いのでとらない。

それに、
弟子の弱点なんて熟知している。




「左の脇下っ」

「ッ!」

雲雀の懐に入ったディーノは、足で左の脇下を蹴り上げた。
打撲しないようになるべく優しく、でもトンファーを手放させるために強く。

その結果、片方のトンファーが地面に転がった。




「癖を直せよ、恭弥。」

「っ……。」

「ほら、唐揚げやるから今日はチャラにしてくれ。」

「交渉‥できると思ってる?」

「まぁな。」

「貴方いつか死ぬよ。」

「お、心配してくれんのか?」

「葬式には赤い薔薇でも供えてあげる。」

「ははっ
縁起わりぃがお前らしいな。」

雲雀がトンファーを仕舞ったのを確認すると、ディーノは「偉い偉い」と言って雲雀の頭を撫でた。




「今度は正々堂々と勝負してやるから。」

その言葉に、黙っていた雲雀が素直に頷く。
これは機嫌が直ったという証拠。

弟子の特徴や癖などを理解してきたディーノは、今度は慣れた手つきで雲雀の頬を撫でた。
そして予告通り、くしに刺した唐揚げを渡す。
それも雲雀は素直に受け取った。




「夜桜見物なんて親父だね。」

「それを言ったらおしまいだろ、俺若いんだけど。」

「酒と唐揚げ。」

「…まぁ、ほら。
酒を飲んだら舌がバカになるっていうだろ。」

「じゃぁ貴方の部下に言っておくよ。
“ボスは部下より年増になった”ってね。」

「生意気。」

ああだこうだ言いながらも、雲雀はディーノの隣に立って唐揚げを食べる。
特にサイズが小さいわけではないのに、雲雀は唐揚げを一口で平らげてしまった。
これこそまさに肉食動物。




「桜って綺麗だけどエロい。」

「何それ。」

「お前みたいだって話。」

「僕をそんな目で見てたなんてね、貴方のイメージが変わった。」

「俺から見て、和服美人はみんな色気がありすぎるんだよ。」

「嬉しくない。」

「照れると腕を組む癖も直せよ。」

「貴方こそ。
欲情したら僕の頬を撫でる癖も直してよね。」






understanding
(それはつまり、愛されてるって解釈でいいか?)
(そのまま返すよ)




10,01/17
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