テンポラリ親子








「よう、元気にしてたか?」

「また貴方か。」

放課後の応接室に来るのは、自称雲雀の家庭教師。
本人は真面目に教師としてやっているが、そもそも雲雀にとって不要だった。
だが未だに咬み殺せてないから、それなりの実力者ということは認めている。




「それで、何か用?」

「特に用はないさ。
可愛い教え子の顔を見に来てるだけだからな。」

「あ、そう。」

ぶっきらぼうに返事をしても、ディーノは笑って雲雀を見る。
この余裕っぷりは何なのか。
まるで雲雀を手懐けたように満面の笑みで笑っていた。

何かムカつく。




「特に用がないなら出ていってよ。」

「そうか。
じゃぁまた今度会おうな。」

「……………。」

これもムカつく。

毎日と言ってもいいほど僕に会いに来るくせに、別れ際はあっさりしている。
これなら応接室に来ない方がよっぽどいい。
ディーノの矛盾した行動に、雲雀は毎回不満を募らせていた。

だから今日は自ら話しかけてみようと、つい口を滑らしてしまう。




「ねぇ…これからどこかに行くの?」

「あぁ、そこで会った女子にちょっと呼ばれててな。」

「校内の?」

「そうそう。
俺もまだまだ捨てたもんじゃねぇな。」

「へぇ。」

「あと今日は弟分にも挨拶しに行く。
まだ学校にいるだろ?」

「知らない。」

「じゃぁ早く教室に行かねぇと。
邪魔して悪かったな。」

じゃぁな恭弥、とディーノはドアに歩み寄る。
しかし雲雀は無意識のうちに彼の腕をつかんで引き止めていた。
そしてディーノの腰に腕をまわして抱きついた。

これが世に言う嫉妬っていうモノなのか。
何だかディーノのあっさり感に不安を感じてしまう。




「恭、弥?」

「…悔しいけど。」

「?」

「僕は…貴方の事、」

嫌いではないみたい。

僕は好きというものがよくわからないし、わかろうともしない。
それは僕が不器用だからという理由もあると思うけど。
でも貴方と一緒にいるのが僕の放課後になってきたから。




「ディーノ…。」

「今日はまた、ずいぶんと甘ちゃんだな。」

「っ…………。」

「そんなに俺と一緒にいたいんだ。」

「…………。」

「嬉しい。」

雲雀は誘われるがまま、ディーノに優しく抱き締められる。
ふわりと香るにおいに安心し、胸板に擦り寄れば頭を撫でられた。

習慣化というのは恐ろしい。
こんな些細なことが積み重なると、人は壊れてしまうのだから。




「まぁ、今は俺を父親だと思ってくれればいいさ。」

こんな風に甘えてくれば、それなりの愛情で返すから。




「な?」

「……………。」

「あ、今不満そうな目をしただろ。」

「貴方が父親とか…ちょっと嫌かもね。」

「それなら反抗期の子供を持つ親の身にもなれよ。」





(俺達の関係はそれでいい)


08,04/01
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