運命は、No fake.
「ぁ、っつ…。」
指が切れた。
ぷっくりと少し出た真紅の雫をまじまじと見つめる。
自分の不注意だな、と重く受けとめながらため息を吐いた。
「っ」
「切ったのか?」
「別に。」
「恭弥にしちゃ珍しい。」
いきなり手を捕まれて驚いた。
こんな人の気配に気付かないなんて自分らしくもない。
自分の不覚さの罰ゲームなのか、軽く切った指を舐められている。
「…何やってるの。」
「いや、切れたら人の唾液の方が早く治るって聞いたから。」
恭弥だってそう習っただろ?と笑顔で問われた。
僕がそんな事をするかだって?
静かに首を横に振れば珍しそうに僕を見る。
人から分泌された液体だなんて汚い。
できる事なら僕に他人が触らないでほしいぐらいだ。
なのに。
「恭弥。」
「ふ、くっ」
頭を捕まれて口を開かされれば接吻の合図。
舌が入ってきて僕の口内をめちゃくちゃに掻き回してくる。
気持ち悪いと思った。
それが接吻の第一印象。
でも今は受け入れている。
いつからだろう、こんなにも気持ちがいいと思えたのは。
結構早かったと思う。
ある日自分から舌を出したら、積極的なんだな、と言われて抱き締められた。
すっぽりと彼の胸に納まってしまった自分が憎らしい。
「ん…ッはぁ、はぁ…。」
「やっぱ恭弥は可愛いな。
なんかお前といると息子が欲しくなるよ。」
彼は頭をポンポンとたたいてきた。
何だか息子って言う言葉は気に入らない。
そんな風に陽気に笑って優しくして…本当はそんな余裕はないクセに。
「何で……。」
「ん?」
「何で貴方がボスなの。」
さっき切れていた指を見る。
もう血は止まって何事もなかったようにそこ在った。
わかってる。
貴方はこんなものじゃない。
戦って戦って傷ついて。
もう体だってボロボロだし。
僕にかまってる暇なんてないんでしょ。
「何で…貴方は。」
「恭弥。」
「ボス、なんかに。」
「恭弥!」
距離をとろうと腕で押し返そうとする僕をさらに強く抱き締める。
これでもかと言うぐらい強く、更に強く。
「ボスになったのは俺の意志だ。
恭弥だって、俺みたいに年をとればわかる日がくる。」
「ディーノ…。」
「ありがとな、恭弥。」
僕だってずっと貴方に色んな事を教えてもらいたい。
まだ離れたくない。
本当はもっと抱き締めてもらいたい。
だけど、これが現実だった。
「もう、
運命は変えられないんだ。」
どんな辛い事からも
(愛を守る)
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死に対して恐怖感を持った雲雀さん。
KAT/TUN曲お題にて更新作品。
08,09/07[完成]
08,12/29[更新]
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