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さすがの恭弥でも、このあと自分がどうなるかわかる。
でも本当にプールに放り込まれるとは思ってなかった。




「……………。」

「どうだ?
少しは俺の気持ちがわかったろ?」

「今、僕の中にあるのは貴方への殺意だけだよ。」

水の中ではズボンがフワフワと浮いている。
空気に触れれば濡れたシャツが肌にぴったりくっついて気持ち悪い。

水をバシャバシャと掻き分けながら、恭弥はディーノの元へ歩く。
対するディーノは、どうせプールに引きずり込まれるだろうと、覚悟していた。
しかし恭弥は何も言わずにプールサイドへ上がる。




「恭弥‥‥?」

おとなしいのが逆に怖い。

不思議に思ったディーノが恭弥の顔を見る。
その表情はどこか寂しそうで、困ったような目をしていた。




「兄貴と喧嘩でもしたか?」

「…………。」

「じゃぁ何だ。」

「別に、何もないよ。」

「…そうか。
嘘を付く生徒には相応の処罰をしねぇとな。」

「な‥‥!」

ディーノは恭弥を持ち上げて再びプールに落とす。
不意打ちだったため、水中から出てきた恭弥の目は、いつもの鋭い目になっていた。




「これが、お前の嫌いな教師の指導だ。」

「別にいいよ。
不意打ちでやられたら不意打ちでやり返せばいい。」

「はははっ
楽しみにしてるぜ。」

深刻な問題じゃなくてよかった。

いつもの生意気な顔に戻ったのを見て、ディーノは安心する。
一方、恭弥はそのまま水中に潜り、プールの中を自由に泳いだ。

プールで泳いだことがないと言ったわりには、ちゃんと形ができている。
あまりにも自由に泳ぐので、恭弥なりに楽しんでいるらしい。




「言ってることとやってることが違うだろ。」

これだから素直じゃない思春期は気難しいんだ。




「ふぅ‥‥。」

「掃除したばかりだから綺麗なプールだったろ。」

「まぁね。」

「楽しかったか?」

「別に。」

「そっか。
そりゃ良かったな。」

「誰も楽しかったとは言ってないよ。」

「そんなの、お前の顔を見ればわかる。」

「……………。」

「体は大丈夫か?」

「平気。」

「よし、じゃぁ上がってこい。」

昼休みなんてあっという間に終わってしまう。
これからプールの授業は無いが、お互いにそれぞれの予定がある。
ディーノはプールサイドに上がった恭弥にバスタオルを手渡した。

だがにらんでくるだけで受け取ろうとしない。
どうしたんだと疑問に思ったディーノだったが、しばらくして恭弥の意図を理解した。




「教師を顎で使うなんて、生意気だぜ。」

バスタオルを大きく広げて恭弥の体を包み込み、全体的にわしゃわしゃと拭いた。

そして衣類を全て脱がし、恭弥の体をバスタオルでくるんだ。
肩からくるむとバスタオルの下から恭弥の脚が見えてしまう。
だからといって腰からくるむと、今度は華奢な上半身が露出してしまう。




「……………。」

「ねぇ。」

「ん?」

「その目やめて。」

「目?」

「野外でするのは嫌だよ。」

「……わりぃ。」

こいつ、何でわかるんだ。

恭弥の言葉によって、
ちょっと押し倒してもいいかなぁという邪念から我に返った。





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