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放課後。
それぞれ波乱な1日を終えた教師や生徒は、校内で自由な時間を過ごしていた。

そして今、職員室では。




















「あー…そこそこ。」

「ったく、何で俺が肩揉みなんてしなきゃいけねぇんだよ。」

「もう‥ちょい右。」

「…聞いてねぇし。」

ついさっきまで爆睡していた白蘭は、寝違えたと言ってディーノに肩や首を揉ませていた。
普通は立場が逆だろう。
プール掃除の借りは何なんだよ、と呟きながらもディーノは白蘭の肩を揉んでいる。




「借りはきっちり返してもらうからな。」

「えー。」

「えー、じゃねぇ!」

「だってさ、そっちはそっちで楽しんだんじゃないの?」

「楽しんだ…って、
別に恭弥に水泳を教えただけ、」

「あぁあーっ
今っ…今のところ!」

まったく人の話に耳を傾けない白蘭に、イラッときたディーノは指の力を更に強くして押した。
すると白蘭は呻き声をあげてパタリと脱力してしまう。

そんな白蘭とディーノの近くに、恭弥と凪がいた。
恭弥は兄が買ってきた弁当とデザートを食べている。
一方凪は恭の上着を綺麗に畳んで袋に入れていた。




「…………。」

「…………。」

後ろで騒いでいる2人に対し、凪と恭弥には沈黙が続いていた。

兄を奪った女だと、恨まれていないか。
自分が兄の上着を持っていることに怒っていないのか。
近くに恭の血縁者がいると、図書室の時よりかなり緊張してしまう。




「…………?」

ふと机上に目をやれば、凪の目の前に和菓子が置かれていた。
透き通った水羊羹の中に、金魚の形をした羊羹が入っている。
どう見ても老舗の店で売っていそうな、高級感あふれる和菓子。




「……これ、」

「もうお腹がいっぱいだからあげる。」

そう言って恭弥は肩に乗っている鳥にエサをあげていた。
しかし目は合わせてくれない。

これは試されているのか何なのか、色々と考えてしまう。
凪が戸惑っている時、後ろからディーノがひょこっと覗いてきた。




「あの…これ。」

「食べてもいいんだぜ。」

「でも、」

「平気平気。
これは凪と仲良くなろうとしてる恭弥の照れ隠ッぶ!!」

「黙りなよ。」

指を休めていたディーノは恭弥の行動を説明をしようとした。
しかし飛んできたトンファーが頭に直撃して倒れてしまう。




「ちょっと雲雀チャン!
僕のマッサージ器を壊さないで!」

「僕の…って、俺は無機物か!」

「え…?!」

「聞き返すな!」

ディーノを心配した凪だったが、白蘭とのやり取りにクスクス笑う。
そして恭弥から貰った水羊羹を食べた。
口の中でサッと溶けてしまう上品な甘さに和む。



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