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「辛くなったら言ってよ。」
「失礼ですね。
公共の場で盛るほど若くありません。」
「大人への道程は長かったね。」
「それに、僕がいつどこで貴方に助けを求めましたっけ?」
「言ってほしい?
昨日の夜なんて舐めてあげたら何回も…、」
「あー、もういいです。」
昨晩の情事、というか最中のことなんて明確に覚えてない。
なので話を聞くと、自分が思っているより淫らなんだと知ってしまう。
話を中断させた骸は1つのベッドを指差した。
要はあそこまで連れていけと言っている。
白蘭は命令に従い、骸を抱き上げてベッドに寝かせた。
「……ずいぶんと安物のベッドですね。」
「でもシーツとか毎朝洗濯してるから文句は言えないよ。」
この学校の職員なら保健室の清潔さは充分知っているだろう。
薬品のにおいが部屋に染み付いていないのは徹底的な掃除をしているから。
これは生徒会と風紀委員が珍しく合致した案であり、同時に生徒や教師が否定できなくなった案でもある。
「ま、利用する人間にとっては嬉しい話だけどね。」
「本当に…どこまでも楽観的な教師ですね。」
「ふふ、ありがと。」
白蘭にとっては最高の誉め言葉だったらしい。
耳元で囁かれて、骸は思わず緊張してしまった。
「その教師から言わせてもらうけど、
ちゃんと休んでる?」
骸の目元に少し隈ができていた。
顔もやつれているように見える。
情事で寝かせてくれないのが原因だと思うかもしれないが、やっているのは夕飯が終わった9時ぐらい。
しかも毎日ではないし、11時にはもう寝ている。
睡眠はとれているはずなのに、何故こんなに疲れているのか。
「自分では休んでるつもりですよ。」
「僕といると疲れるのかな。」
「そんなことはないです。」
「心当たりないの?」
「そうですね…。」
最近変わったことは、
「寝てるときによく起きてしまいます。」
「へぇ、珍しいね。」
「2時間に1回とか…ひどいときは30分に1回ぐらい目が覚めます。」
「それはいつから?」
「一昨日とか、先週は特…に………ッッ!」
「………………。」
「ち、違います違います!
絶対に、あの、だからっ」
「骸君って、本当に人を誘うのが上手いよね。」
「そんなつもりは…っ」
顔を真っ赤にさせて否定するが、もう遅い。
骸は途中から、続いて白蘭も気付いてしまった。
機嫌が良くなったのか、白蘭は不敵にではなく柔らかく笑っていた。
そして骸の言い訳を聞かずに唇を塞いでしまう。
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