歌、唄、謳





※骸♀、歌手パロ注意。





「……………。」

「あ、起きました?」

「‥あれ。」

深夜からレコーデングを始めて終わったのは朝。
仕事場から遠くないホテルに泊まろうとして、街を歩いたのは覚えている。
だが部屋に着いてからの記憶は一切無い。




「よくわかったね。」

「スタッフの皆さんに聞いたんです。」

「僕は…どうしてた?」

「玄関で寝てました。
僕がベッドまで運んだんですよ。」

「ありがと、仮を作っちゃったね。」

ベッドから起き上がり隣で寝ている恋人を見る。
下着はつけているようだけどシーツでギリギリ見えない。
寝呆けた視界で認識しても色気がハンパ無い、これでは一夜を過ごしたバカップルのようだ。

白蘭はベッドから降りて冷蔵庫から水を取り出す。
ゴクリと一口飲んで再び骸の元へ戻った。




「だいぶ疲れてますね。」

「あー…わかる?」

声の調子がさほど良くなかった白蘭は、今日も行われるであろうレコーディングが鬱陶しかった。

自分のメロディや歌詞は目の前にいる彼女をイメージして作られている。
骸さえ傍にいればいい声が出せる、そんなワガママも最近出てきた。

簡潔にまとめると依存ってことになるよね。




「あ、また歌のこと考えてましたね。」

「何でわかるの。」

「人差し指でリズムをとるのが貴方の癖ですよ。」

「ふー‥ん。」

戻ってきた白蘭はベッドにダイブし、シーツごと骸を抱き締めた。
待っていた熱を求めて、そのまま大人しくしていたら深く感じる上品なキス。
酔ってきた骸はだんだん舌の動きが遅くなり、息切れが激しい。

うーん、
今度の主題は「挑発」にでもしてもらおうかな。
それとも彼女の方が上手っていう肉食女子みたいな歌も案外…。
言い方悪いけど、骸君って歌のいい材料だよね。


歌詞を考え音楽を混ぜてみたら、わりといい案だった。
だが再び仕事の内容を思い出していた白蘭は、キスの合間に舌を噛まれる。




「ったッ」

「何回言われればわかるんですか!」

「ッ…ごめんごめん。
もう仕事の事は考えないようにするから。」

「また“君をイメージして曲を作ってた”でしょう?」

「ゔ………。」

「次に出す曲、失恋系の歌詞じゃないですか。」

「いや、違う違う。
あれは結ばれたけど描いてた幸せと違うっていう話だよ。」

「昼ドラのような展開ですね。」

「骸君…。」

「僕は、ハッピーエンドじゃないと嫌です。」

これを世間ではクレーマーと呼ぶのだろう。
寝るときはいつも白蘭の歌声が囁かれて、いつも心地よい。
なので骸は安心するような甘い歌詞の方が好きで、失恋や悲しい歌は嫌っていた。




「でもレパートリーってヤツを増やさないと。」

「だったら今度は僕が歌を書きます。」

「いや‥君の書く歌は奥が深すぎて頭がこんがらがるから。
漢字検定何級の文字を書いてるのさ。」

「大丈夫です。
内容はヒステリックではありません。」

「ツッコミをいれる場所はそこじゃないって。」

典型的な文系である骸は、稀に歌詞を書いたりして白蘭を支えていた。
だが知能がありすぎるのも困ったもので、頭が良い方に分類される白蘭でも読めずに詰まってしまう漢字が出てくる。
ピュアな彼女は可愛いが、時には頭を悩ませる種にもなる。

ま、そこがいいんだけどね。




「今日レコーディングに同行してもいいですか?」

「んー?」

「白蘭の真面目なところ、久々に見たくなってきました。」

「歌ってるとき乱入してこないならいいよ。」

「だって‥聞いてる側としては焦らしなんですから。」

「君に禁欲って言葉は無いの?」

「僕は欲に忠実なんです。」

「え、じゃぁこれから僕の歌は不健全になるわけ?」

「僕の気分次第ですね。」



her sound
(骸君って案外デレだよね)



フリリク企画に提出。

10,06/27[更新]
10,01/24[完成]
戻る
リゼ