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優しくしなくていい

哀れみの瞳で見るなら殺せ

貴方なんて大嫌いだ




















ザーザーと雨の音がする。
今はその音だけしか聞こえなくて、不覚にも白蘭の気配に気付かなかった。




「……………。」

「あーらら。
こんな所にいたの、骸君。」

「……………。」

「探しても見つからないからさ、何処に行ったのかと思ったよ。」

屋上の扉が鈍い音をたてて開かれ、白蘭はやってきた。
骸はギリギリ雨が当たらない扉の隣で、膝を抱えて座り込んでいる。
しかし、白蘭が話し掛けてきても無視をした。




「さ、もうそろそろ戻ろっか。」

「……………。」

「?
骸く、ッ」


パチン

差し伸ばされた白蘭の手を骸を振り払う。
と同時に髪を掴まれ、顔を上げさせられたと思いきや殴り飛ばされた。
しかも、その反動で暴雨の世界に入ってしまう。

骸は激しい雨に逆らいながらも体を起こし、相手を睨んだ。
そんな態度の骸に飽きれ、白蘭は暴雨の世界に1歩ずつ足を踏み入れる。




「本当、甘えたさんだよね。」

これで少しは頭が冷えたかな。




「…僕に、構うな。」

「あっそう。
じゃぁ何で僕が君を探しに来たと思う?」

「………。」

「君を1人にすると、死ぬからだよ。」

「なッ…。」

「違うって言うのなら今の状況は何?
凍え死にたいの?
雷にでもあたりたいの?
それとも飛び降り?」

「…っ黙れ。」

「もう自覚して。
甘ったれな君は構ってほしいからこんな場所にいるんだよ。
常に誰かの支えが無いと不安なんでしょ?」

「黙ッ……っ!」

白蘭の言動に怒鳴ろうとしたが、唇が塞がれて言葉は途切れた。
キスを素直に受け止めてしまった骸はされるがまま。
自分は人肌がないと死ぬ、白蘭に言われた言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。

生温かい粘膜が擦り合う。
いつも欲を掻き立てられるキスの水音は、雨音で聞こえずにいた。




「ン‥…びゃ‥くら、びゃくっ」

恐い。

この雨のせいでリップの音が聞こえない。
目の前にいる人物が別の空間にいるようで、急に恐くなった。




「ん、」

「ッぁ…はァっ‥はぁ。」

やっと唇は放れたが、雨の中で呼吸するのは気持ち悪い。
顔も髪も服も全てが濡れていても、自分達を繋ぐ銀色の糸は何処にあるのかわからなかった。

それだけでまた、恐くなる。


白蘭は骸の頬に手を当て、殴った所を優しく撫でた。
気持ちがいっぱいいっぱいなのか、骸は黙って白蘭を見つめている。




「…どうしたい?」

不意に言われた言葉。
それはそれは丁寧かつ優しい声だった。
いつも跳ねている髪が雨に濡れて垂れ下がっていても、視線の威厳さだけは変わらない。




「部屋、に…戻りたい…ッ」





離れないで

助けて

まだ、死にたくない




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