in milk?







「ブラック派です。」

「僕はミルク派だよ。」

「じゃぁ自分で煎れてください。」

「やだよ面倒臭い。」

クッションを挟んでソファーの両端に座る骸と白蘭。
コポコポとコーヒーが沸騰しているのを眺めていると、横からふわりと花のにおいがした。
と思えば世界が反転する。




「…何ですか。」

「沸くまで暇だから。」

「またそんな。」

「何、期待した?」

「別に。」

「ふふ、残念。
やらないよ。」

ちょっとぐらい期待してくれたっていいんじゃない?

骸の反応に少しだけガックリした白蘭が体を起こすと、いい香りが漂う。
すでに出来ていたコーヒーは、白蘭によって2つのカップに注がれた。
その後は個人のお好みで。
白蘭はミルクと砂糖を大量に入れて味見してみる。




「う〜ん、絶妙。
香りでコーヒーの美味しさが分かっちゃうなんて、僕も年だよね。」

今自分何才だっけ?

そう言って年を数えている白蘭の隣で、骸はそわそわしていた。
上着を脱いでネクタイを外し、髪止めも取って隣に座る白蘭に寄り掛かる。




「あれ。」

既に注いであるコーヒーを差し出しても無反応。
冷めないうちに飲んじゃいなよ、と言っても見向きもない。
差し出したカップは、テーブルの上に置かれた。

これはどういう意味かというと、




「…やっぱ期待してたんじゃん。」

「ン……。」

骸と白蘭の間に挟まっていたクッションを退け、静かに抱き締める。
おろしている髪を軽く指で梳いてやると気持ち良さそうに目を閉じた。

髪を耳にかける。
それだけでうっとりと息を洩らした。
何故だか知らないが髪を耳にかける行為は心地よく、眠気を誘うらしい。




「眠い?」

「…………。」

骸が素直にコクリと頷けば、目の前に白蘭の顔が写った。
骸が薄らと目を開けると、キスされていることに気付く。
だが抵抗はしない。




「ン………ふ…ぅん。」


「…ん……。」

いつもよりスローペース。
なので唇を味わうような濃厚でゆったりとしたキスだった。
唇に舌を滑り込ませると、奥の方からぎこちなく舌を出してくる。
こんなキスも良いもので、長い間ゆっくり呼吸をしながらキスを続けられた。




「ん……、
砂糖‥何個入れました?」

「6つ。」

「虫歯になりますよ。」

「これでも虫歯になったことないから大丈夫だよ。」

馬鹿らしい、
そう思ったのも束の間。




「ぁ…、」

「君が誘ったんだからね。」



slowing
(ゆっくり溶け合う)


08,12/07
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