(わからねぇ。どうしてもわからねぇ。ヒナタの手首のサイズって、どれくらいなんだ?)


俺、犬塚キバは只今露天の前にて考え中。
何をって、そりゃ、ヒナタのプレゼントだ。
最初はそこらへんをただ適当に散歩していただけだったんだけど、道端の小さな露店を見かけたら、散歩だけじゃなくなってたんだ。
その露店には、女向けのアクセサリーがずらりと並んでいて、ふと見てみるとヒナタにあいそうなアクセサリーを発見した。
淡いピンク色をしたブレスレットだ。


「わんっ」


赤丸が俺の服を引っ張っている。
早く帰りたいっつーのはわかるんだけどよ。
でもさ、ヒナタにあいそうなブレスレットを見付けちまったんだよ。

誕生日とか、何かの記念日っつーわけじゃないんだけどよ、プレゼントしてやりたいじゃん。


「もうちょっと待ってろって、赤丸」


頭に手を置いて軽く撫でてやると、"仕方ない"という意味なのか、赤丸は突然大人しくなった。


「どのサイズがいいんだろうな」


俺が悩んでいると、


「あれっ、キバじゃん」


と女の声がした。
この声は…


「なんだ、いのか」
「なんだとは何よ、失礼ね。ていうか何してんの、こんなとこで」


俺が何も答えずに黙っていると、肩に手を当てて、


「うんうん、わかってるわよ。ヒナタにプレゼントをするのね」


と言ってきた。
…図星だ。


「あたしに任せなさいって」
「えぇ」
「えぇって何よ」
「いやなんとなく」
「何よそれ。…んで、あんたはいったい何で悩んでたの」
「…サイズ」
「え?」
「ヒナタのサイズがどれくらいかわかんねぇんだ」


それとついでに、どのデザインのアクセサリーがいいのかも話しておいた。
いのはしばらく考え込んだままだった。


「じゃあ、あたしの手を参考にしなさいな」

(え、いのの手を?)

「……」
「何、どうしたの」

「ヒナタの手首って、もうちょっと細かった気がする」




ガツッ


俺の頭を思いきりグーで殴ったいのの手は、少し痛そうだった。
ていうか、俺もかなり痛いんだけどよ。


「痛ぇー」
「ったく、重ね重ね失礼なやつね」


ケッ…俺は正直な気持ちを述べただけなのに。



「今度そんなこと言ったら承知しないわよ」
「今度っつーか、今のって承知してなかったじゃんよ」
「何か言った?」
「いや、何にも……」


結局、いのと同じサイズのを買った。
そこまでサイズが違うこともないだろう、といういのの案がそうさせたのだ。
それにしても…あーあ、これだからこういう女は苦手なんだ。
気が強いっていうの?
女としてなんて、意識できねぇし。
チョウジのやつ、いののどこがいいんだか。





「そりゃ、キバがいののことよく知らないからだよ」

プレゼントを買った後、いのと別れてヒナタの家に行こうとしたとき、たまたまチョウジと出くわした。
どうやらラーメンを食いに行く途中だったらしい。


「あー。俺、同じ班じゃねえしな」
「まぁそれもあるけどさ。でも、いのって結構いいやつだよ」
「いいやつだっていうのは、俺にだってわかってるっての」
「じゃあ、もっといのと話してみればいいんじゃないかな」


いや、俺は今の関係で十分だ。
それに…


「もし、俺といのが親しくなって、俺がいのを好きになったらチョウジ、どうすんの」


今の俺にはありえないけど。


「う。それは困るなぁ」


…正直なやつ。




リゼ