14.友達
友達は沢山いた。

犬のポチくんに猫のタマ、兎のシロに鳥のピーちゃん。

……みんないなくなってしまったけれど。

わたくしと違って、みんなは短命だから、すぐにお別れがきてしまう。

そんな時、人間のくせにやたらと関わろうとしてくる変なのと出会った。

「なぁなぁ、自分そんな難しい顔してどないしたん?」

この人は、一体何語で話しているのでしょうか……?

「なぁ、無視せんといてーなーわー悲しゅうなってまうやん」

「に、日本語でOK」

「へ、あぁ、方言無理なん自分?」

「方言?」

「ん、地域独特の言葉の事。 そういえば自己紹介まだやった! 俺は圭室! よろしゅうね」

「よろ……よろしくってことです?」

「そうそう」

何がどうよろしくなのでしょうか……これはわたくしも名乗らなければならないのでしょうか、でも……

「で、そっちは名前はなんていうのん?」

「し、知らない人に個人情報は教えてはいけないのでございます!」

「んん?! それなら心配ないで! もう俺らは友達やからね!」

「とも、だち? 友達になった覚えはございません!」

「えぇ、そんないけずな事言わんといて−なぁ……なら、どうしたら友達になってくれるん? 今までの友達はどんな感じに友達になったん?」

「公園や雨の中出会って家に連れて帰って……」

「なるほど、じゃあ俺のことも家連れてったって?」

「もふもふしてないから嫌でございます」

「えー髪の辺り結構もふもふしとるよー?」

なかなかしつこいですね……からかわれてるのでしょうか。

「んーもしかして友達って動物限定なん?」

「……!」

「あ、図星っ?!」

「……というわけでお引き取りくださいまし!」

「いやいやいや、ここまできたら俺も引けんね。 あ! 動物限定ってことは人間も入るやん!」

「わたくしの中では入りません!」

「なら猫っぽいってよう言われるから、今日から猫になるから!」

「猫さんに謝ってくださいまし!」

「ええええええええええええええ?!」



こんな会話を繰り返しているうちに数時間が経ってしまったようで。
人とここまで話したのはもしかしたらこの時が生まれて初めてな気がいたします。

「じゃあペット! 友達やなくてペットでいいから飼ったって!!」

「もうなんでもいいですよ友……え?」

「わーい! 今日からペット生活やー!」

「ええええ?」

「で、俺のご主人さまのお名前は?」

「水無月真白、ですけど……あの、その」

「真白かー! ええ名前やね!」

「ありがとうございます、でもペットって」

「俺の名字、たまむら≠竄ゥら猫っぽくタマって呼んでええからね。 これからお世話になりますぅ」

にこにことじゃれてくるこの人間は確かに少しだけ、ほんの少しだけ猫さんに似ていたので、わたくしの気の迷いか何かで連れて帰ることになってしまった。

そして、この奇妙な共同生活は想像以上に長く続いた。



「なぁなぁ、ふと思ったんやけど……真白って友達は沢山おるけど、ペットは俺一人やんな?! 独占ばんざーい!」

「タマ! そういうことはせめて家ん中だけで言いなさい!」

「家の中ならええのん?!」

タマは友達と呼ぶには今までの友達と違いすぎて違和感があって、ペットというのもまた違う感じがする。

結局、彼は、わたくしにとってのなんなんでしょうね……?
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