56.退屈
DSの電池も切れちゃったし、リーダーもくーちゃんも今日は用事でいないし退屈! すっごく退屈!
特にまとめる資料とかもないし、帰っちゃおうかなーっと思ってるとこころちゃんが不気味な笑顔でじりじり近づいてきた。
なにこれ怖い!!
「不気味な笑顔とは酷い言われようですね」
こころちゃんは更に、にこぉと笑顔を強化させて目の前のソファに座った。
「もー勝手に心読まないでよー!」
「すみません、自分の意志関係なく見えちゃうのでどうしようもなくって。 でも全部見えるわけじゃないからもどかしいんですよね、色々と!」
確かに全部見えるんだったらボクの性別とかわざわざ質問する必要ないもんねー……。
「ほんとそうなんですよ! で、結局光先輩は男なんですか!女なんですか!」
「えーどっちに見えるー?」
「私的には男かなと思うのですが」
「じゃあそれでいーんじゃない?」
「適当ですね!!! もうなんで先輩はいつもいつも灰色なんでしょうね……! これがほんとのグレーゾーンですか!」
灰色? なんのことだろ。
「心の声のことです! 私には顔の横辺りに心の声が文字としてぼんやり視えるのですが、女は暖色で赤とかピンクとかで男は寒色で青とか緑っぽい色なんです。 でも光先輩や望さんは灰色とか白とかで性別が不明なんです!」
「へぇ、そーなんだー! でも、ボク性別不明だからそれで合ってると思うよー?」
不満と顔に思いっきり書かれたこころちゃんの顔を見ながら、見て満足するんだったら全裸にでもなって実際色々見せてもいいけど、望が怒りそうだしなー。
その前に人前で全裸はないなー。 後輩に部室で全裸見せるとかそんな変態にはなりたくないもんなー。
「裸見れば性別がわかるなら口で言えばいいじゃないですか……!」
「え、また心視たの?! いやだから口では言ってるじゃん、性別不明なんだってばー!」
困ったなぁ、どうしたらわかってくれるんだろうと途方に暮れてると一通のメールが届いた。
あ、この着メロは望だ。
「ごめーんこころちゃん! 今日望が早く帰って来られるみたいだからもう帰るね! ばいばーい!」
待つようにこころちゃんが言ってた気がするけど、話をちゃんと聞かないわるい子は無視しちゃう。
なんでボクの事なんて、知りたいんだろ。
あ、そっかこころちゃんの趣味は人間観察だからか。
でも、ボクのこと知ったって気持ち悪いって思うだけだから。
知らないままの方が、いいのになぁ……。
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