変な人

私の隣は変人だ。
もう高校一年生だというのにまだ中二病を引きずっている。
孤独だなんだとよく分からない発言が痛々しい。

しかし、ちゃんと接してみると意外と優しくて、校内案内をしてくれと前の席に座るみゆちゃんに頼んでくれたり、あの先生はどうだとか色々教えてくれた。

松野カラ松。
彼のおかげで、転校してきて数日でクラスに馴染めた。

「ありがとね、松野。」
「えっ?な、なんだ、急に。」
「別に。」

いつもは眉毛をキリッとさせてドヤ顔してるくせに、褒めたりすると戸惑ってしまう。
そっちの方が面白くていいと思うんだけどなあ。

「ま、まあ…俺の存在はみんなを照らすからな。」

戸惑いすぎていつもより意味のわからないことをほざいていた。

「あ、そういえば松野って六つ子なんだよね?」

ふと思い出したことをそのまま口にする。
それを知ったのは昨日の放課後だった。

「そうだがなぜそれを?」
「さきちゃんに聞いた。松野が野球してるんだもん。」
「そうか。野球なら十四松だな。五男だ。」
「へえ。松野何番目?」
「俺は次男だ。」
「ふうん。」
「気になるか?俺の兄弟。」
「ううん。」
「ああ。俺もできれば会わせたくない。」
「へえ。」
「…理由聞かないのか?」
「…なんで?」

どうせ中二病発言が来るんだろうなと構えれば、「フッ」といつもの笑い。

「お前は俺だけの天使だからな。」

ばちん、とウイングを決めてきた。
…なるほどその手の中二病発言か。

「自分で言って照れるのやめてくれない?」

数秒後に顔を赤くしてしまう松野に呆れながら、私は少し笑ってしまった。
本当にこの人は変な人だ。
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