*紫原小学生設定

桜が散って気温も上がり、心地良い風が吹いている。紫原は窓の外を眺めながら大きな欠伸をした。眠くなるのも皆納得できる陽気で、実際紫原以外の生徒も眠そうに授業を受けている。

正直、紫原は今にも眠りの世界に旅立とうとしていた。だがしかし、根性で目を開け続ける。なぜ面倒くさがりや彼がこんなにも一生懸命授業を受けているのかというと、彼が好んでやまないお菓子が入った袋、通称お菓子袋を没収されたからである。理由は明確である。一時間目からぐっすり居眠りを決め込んだからだ。

ああ、眠い眠い。頬杖をつきながら、それでもきちんと板書をする。後で先生に見せ、きちんと授業を受けていたか証明するためだ。でないとお菓子は返してもらえない。それだけは回避しなければならない。お菓子は紫原の原動力なのだ。先生だってそれをわかっているだろう。なのにこの罰はなんだ。

「まじ意味わかんねーし」

小声で文句を言ったらギロリと先生に睨み付けられた。うわぁ地獄耳だなぁ名前ちん。それでもどきっとしたからか一気に目が覚め、その勢いで何とか本日全ての授業を乗り切った。

そして放課後、教室で作業をしていた先生のもとへ駆け寄り、今日一日分のノートを先生に差し出した。

「はいノート」

「はい受け取ります。……うん。ちゃんと板書してあるね。よしよし」

「名前ちんお菓子返してー」

「こら!名前せ・ん・せ・い!でしょう?」

「いいから名前ちんおーかーしー!!」

「もー。本当はお菓子自体、学校には持ってきてはいけないんですからね?はい、お菓子」

「わーい!!」

「あ!こらぁ!学校内は走ってはいけませーん!!」

紫原は先生からお菓子袋を引っ手繰るように受け取り素早く逃げた。もしまた没収されたら…と思うと、一刻も早く先生から離れるのが得策だと考えたからだ。

走って走って、自宅まで逃げ帰ってようやく一息吐いた紫原はイライラしながらお菓子袋を開け、まいう棒を食べる。

「まじ名前ちん最悪だし〜ほんと嫌い。あ!もしかしたらいくつか食べられちゃってるかも〜確認しとこ」

ガサガサとお菓子袋をひっくり返し、中身を確認する。すると、一つだけ買った覚えのないチョコレートのお菓子と、知らない折りたたまれた紙が入っていた。

「なんだろこれ」

紙を開き、何か書かれているのか見ると、そこには先生の文字があった。

『一日よく頑張りましたね。ご褒美です。明日も頑張ろうね。紫原君は出来る子だって、先生知ってますよ? 名前"先生"より』

「名前ち、ん?」

読んだ途端、ぶわぁぁと心が震えた。顔が熱い。紙を持つ手が小刻みに震えてる。何だか心臓がぎゅぎゅっと何かに締め付けられているような、なんだかよくわからない感情が湧き上がり、紫原はきゅっと唇をかみしめた。


恋をしました
(今日もちゃんと起きていられましたね。偉いですよ!)
(名前ちんのせいだし!)
(え?)
((どきどきして眠れなくなっちゃったの!!))


リゼ