「キヨタカは本当に真面目な優等生だよね」名字がそう言うと、石丸は誇らしげに胸を張りつらつらつらつら学生の本業は何だとか、本来勉学とはどういうものなのかを語り始めた。良くまぁ其処まで舌が回るものだと感心しながらも左の耳から右の耳へ聞きながす。
石丸は「名字君ちゃんと聞いているのかね?」と言いながらずずいっと名字に詰め寄った。石丸が急に近づいてきた事に飛び退く名字。そんな風間を追い詰めるべく更に詰め寄る石丸。
「僕の話をちゃんと聞いていたのか?」
「聞いてたよ」
「人と話す時は人の目を見て話すべきだ!!さあ僕を見ろ!!」
「もう!人の目を見て話すのは疲れるから苦手なんだよ!!」
「だが目を見て話してもらえない僕は傷つく!!」
「え」
ぱちり。視線と視線がぶつかり合う。石丸は満足そうに笑い、風間の頭をぐりぐり撫でた。少し痛い。この辺の多少の乱暴さは、兄弟の契りを交わしたらしいあの男の影響だろうか。
「そんなちっちゃい事で傷ついちゃうのお前は」
「小さい事などではない!視界にきちんと入れてもらわなければ僕が君の脳にきちんと認識されているのか居ないのか分からないではないか!」
「いや別に返事してるし認識してるよ」
「空返事ということもあるだろう?」
「あー…」
無いとは言えない。それは確かに無くも無い事実。相手の事を見ないまま、他の事に集中している場合適当に返事をして流したことがあるし、されたこともある。
石丸は相変わらずキリリとした顔で私の顔…目をじっと見ていた。返答を待っているのだろう。風間は一呼吸置いてからきちんと視線を合わせて口を開いた。
「確かに、そう言う事もあるだろうね」
「そうだろう!それはまるで相手が其処に存在しないかのような扱いだ!それは非道徳的行為だ!!だからこれから君も人の目を見て話すよう心がけたまえ!」
「ういういそうねー」
「返事は一回だ!!!」
「はーい」
「伸ばさない!!」
「はい」
石丸に訂正を指示されたところをきちんと直し風間はドヤ顔で石丸を見る。
石丸は酷く満足げに笑っていた。
しょっぱい砂糖水
(キヨタカ、キヨタカ。私を見てよ)
(…)
(キヨタカ)
(…)
(…キヨタカの馬鹿)
++++++++
石丸君とハッピーエンドはどこですか。