※時間軸としては、最終話のすぐ後です。


「ちょっと汚いけど…入って下さい」

「うん」

記憶をなくしてから、初めて入室するナマエの部屋。

クダリは靴を脱ぎ、玄関を上がろうとした時、ゴミ袋に入って居るそれらを発見した。

「こ、れ」

「あ!そうだそうだ。全部戻さなきゃですね」

ゴミ袋の中には、クダリがプレゼントしたぬいぐるみや服、アルバムなどが乱暴に詰め込まれていた。

―ナマエを追い詰めたのは、ボク。

―わかってる。わかってる。…けどっ!!

ナマエを傷つけたという紛れもない事実と、ナマエが自分との思い出を捨てようとしていたという事実が相乗して、クダリはぼろぼろ泣き崩れた。

「ちょ!?どうしたんですかクダリさん!?」

「う、うわああああん!!!ゴメンゴメンねナマエボク二度と忘れないからボクと一緒に居てえええ!!!」

「居ます!居ますから泣かないでください!」

「酷い事いっぱい言った。ナマエを泣かせたのもボク。だけど…だけどノボリの前で泣いたりしないでえええ!!!泣くならボクの前で泣いてよおおおお!!」

「何で知ってるんですか!?ってわあああ!!!」

勢い付けてクダリはナマエに飛び付いた。涙と鼻水でぐちょぐちょの顔をナマエの肩に押し付ける。濡れたナマエの服が深い色へ色を変えていった。

ナマエは急なクダリの行動に混乱しながらも、泣き続けるクダリの背中をゆっくり撫でた。

「ごめんなさい。捨てようとしてしまって」

「う、ううん。ボクが、ボクが其処までキミを追い詰めたから」

だから、ナマエは謝らないで。

ナマエを抱きしめる腕の力を強め、弱弱しい声でクダリは言った。

―まるで、逃がさないようにしてるみたいだ。

ナマエはそう思い、そっと苦笑した。

「私はどこにもいきませんよ」

「う、え?」

「安心してください。私はクダリさんと、ずっと一緒に居ますから」

ぽんぽんと赤子をあやす様に背中を軽くたたくと、漸くクダリは落ち着いたらしく、しゃっくりを上げてはいるが泣きやんだようだった。

「ず…っと?」

「クダリさんが嫌だって言うまで、ずっとです」

「ボクそんな事言わない!ナマエとずっとずっと一緒に居る!」

「なら、ずっとです」

クダリは抱きしめていた腕の力を緩め、腕の拘束からナマエを解く。そしてナマエと向かい合った。

泣きすぎたのか、クダリの目は赤く腫れ、締まりのない顔をしていた。それをみてナマエはぷぷっと吹きだした。

ぷぷっと吹き出したナマエを見て、クダリもふへへと笑った。

「もうノボリの前で泣かないでね」

「もう私の事泣かせないでくださいね」

「うぐっ」

「あははは!冗談ですよ!」

痛いところをつかれて口籠るノボリをみて、ナマエは大笑いをした。

クダリは、大笑いをするナマエを見て、二度と忘れないと固く心に誓った。

一頻り笑ったナマエは、ふぅーと息を吐いて自身を落ち着かせ、ゴミ袋を指差して言った。

「クダリさん、一袋持ってください。一緒に元に戻すの手伝って下さい!」

「うん!」

漸く二人は、手と手を取り合い、心の底から笑いあえた。




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白玉様へ!遅れてしまってなんかもう本当にすみません。遅筆ですみません。
連載番外編のリクエスト有り難うございました。
なんかもしかしたら他の連載番外編と矛盾点が生じてるかもしれませんが、そこは見逃してやってください。
お持ち帰りは白玉様のみとさせていただきます。有り難うございました!


リゼ