クリスマス。それは恋人のためにあるような行事である(日本限定)

しかし、それと同時に商売繁盛御礼ひゃっはーな日でもある。街の中はクリスマスカラーである赤と緑で彩られ、美しいイルミネーションが光り輝いている。

この日はお父さんもお母さんも、絶対に家に帰ってこない。帰ってこれないのだ。

喫茶店はクリスマスのカップルと家族で埋まり、その準備があるためだ。

だから、私はクリスマスが嫌いだった。お母さんも、お父さんも誰もいない家で、一人寂しくクリスマスケーキを貪る女子って侘しすぎる。

だけど今年は皆と過ごせるかなって思ったが、タケルは家の手伝い、スイカちゃんはおばあちゃんと過ごし、ジャックとアーニャも家族と過ごすと言っていた。

ちょっと期待外れ感を勝手に味わったのは記憶に新しい。

「メリークリスマス。ネンコ」

「メリークリスマス」

それでも、今年は一人じゃない。私にはネンコがいる。

家にあるクリスマスツリーの電源を入れ、机の上に豪華な料理を並べる。チキンなどは買って来たものだが、ケーキは、何とネンコが作ってくれた。

人型になって材料を買い、私が居ないうちに作りあげていたらしい。しかもザッハトルテだと。私よりネンコは確実に女子力が高い。

私が作れるケーキなんて、精々チーズケーキくらいだ。チーズケーキは材料混ぜて焼くだけの簡単なケーキである。ホットケーキはうまく焼く事が出来ない。

「うん。美味しいよネンコ」

「そうか」

ネンコが作ったザッハトルテは、そこらへんの店のものよりも格段に美味しく、かなり驚いた。

だって、ネンコがケーキを作ったのは、これが初めてのはずだ。

本当に器用だなぁとザッハトルテを口に運びながらしみじみ思った。

「あ、ねぇ。私からプレゼントがあるんだ」

「?」

その場から立ちあがり、隠してあった紙袋を取り出す。そしてその中から、一つの箱を取り出した。

それをネンコに手渡すと、ネンコはラッピングされてあったリボンをするするっと解いた。

「今開けるの?」

「…」

こくんと頷き、包装紙に付いているセロハンテープを器用にはがしていくネンコ。

包装紙が剥がれ、ボックスアートが姿を現す。ネンコは其れを見て、ピクンと耳を動かした。

「ネンコがほしいものと言えば、スニーカーだよね」

「どうやって手に入れた?」

訝しげな表情を浮かべ、ネンコは私を見る。

「これ?お店で買ったんだよ」

「どれくらい探した?」

「そんなに手間取ってないよ」

「どれくらい探した?」

「ちょっとお店梯子したくらいだよ」

「どれくらい探した?」

「……靴屋30店くらい梯子しました」

ずい、ずい、ずずい。返答を誤魔化す度にネンコは近づいて来て、威圧感に押しつぶされそうになり、正直に吐露した。

ネンコの読んでいたスニーカー雑誌を、勝手に盗み見たとき、今ネンコにプレゼントしたスニーカーのページにドッグイヤーしてあったのを発見。

クリスマスプレゼントはこれにしようと決めたが、限定モデルらしく見つからない事見つからない事。注文は出来ないのかと聞いたが、限定モデルは出来ないらしい。

タケルの家にも無く、隣町やそのまた隣町。果ては隣県まで探し歩いた。ネンコにばれないようにするためのが大変だった。

何とか見つけたのも、今日の午前中である。ちなみにその間にネンコはケーキを作ってくれていたようだ。

「…馬鹿か」

「えー。酷い」

「…」

ボンっ。

音を立て、ネンコは急に人型になった。煙に隠されている間に一瞬で服を着たようで、煙が晴れた時には既に服を着ていた。

うわぁイケメン過ぎて直視できない。イケメンに耐性が無い私にとって、ネンコは良い意味で目に毒だ。

「ななななんで急に人になったの」

「…」

「うひゃああ!?」

ずずずずいっと、更に近づいてきたネンコは、真正面から私を抱きしめた。心臓が口から飛び出るかと本気で思ったのはこれが初めてだ。

焦る私を余所に、ネンコが私の肩に顔を埋め、そして耳元で囁く。

「大事にする」

そうですか。探したかいがありました。ところで離してください心臓が破裂します。

そう言いたかったのだが、あまりの緊張に放心状態になってしまい、口はぱくぱく動いたが、何も言えなかった。

ネンコはその体制のまま、全く力を緩めてはくれなかった。

誰かとクリスマスを過ごすのは、とても幸せなのだけど、これはちょっと心臓に悪いな。と冷静に考えられるようになったのは、ネンコが強制的にうさぎにもどった時だった。








9000HIT うさぎ番外(ありさ様)






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拍手に再度お返事ありがとうございます!
そそそそそんなに読み返していただけているのですか!!?
有り難うございます!とても嬉しいです!
リクエストのほう、漸く完成いたしました!
ご満足いただけるような作品ではないかもしれません。(甘甘か自信が…)
大変お待たせしてすみません!リクエスト有り難うございました!
※お持ち帰りはリクエストしてくださったありさ様のみと致します。








リゼ