Bitter,Sweet[水月夢](きざぎざ。コバトさまより)


がっこん、と音を立てて落ちてきたのはブラックの缶コーヒー。

素知らぬフリしてかしゅんと開けて一口啜って

「うわ、苦い」

そんなアタシの様子を、水月がココアを啜りながら

「何、もしかして間違えたとか?」

馬鹿だねー、なんてニタリ笑った。

甘々なミルクたっぷりのカフェオレはアタシが押したブラックコーヒーのボタンの隣にあって

「う、最悪」


間違えた、とがっくり肩を落とす。

でも、これは演技。

苦手なブラックコーヒーも、間違えたフリしてわざと買った。

「ねぇ」

”水月はブラック、飲めるでしょ?”

だったらそのココアと交換してよ、そう言ってアタシは水月の前に缶を差し出した。

そう、狙いは・・・間接キス。

付き合って間もないアタシたちは今日初めて手を繋いだ。

「寒いね」

「冬だからね」

「手、冷たい」

「・・・貸してごらん」

そう言って、アタシのかじかんだ手をきゅっと繋いでコートのポケットに入れてくれたのは水月。

まぁ、これも作戦といえば作戦なわけで。

だから、ステップ的にお次はチュウ。


アタシから迫ってもいいけれど、やっぱり男の子の方からするのがセオリー。

「早く、ココアもコーヒーも冷めちゃうよ」

アタシにできることといったら雰囲気作り。

がち、ココアの口に歯を立ててほんの一瞬宙を見やって何かを考える水月の顔をちら、と伺ってよしあと一押し。

「・・・ダメ?」

なんて、上目遣いで可愛らしくおねだりすれば

「それ、って・・・ボクとキスしたいってこと?」

ぽ、とほっぺを赤くして

「だったら最初からそう言えばいいのに」

ニタリ、意地悪そうにまた笑った。

「かーわいいなぁ、なまえは」

「・・・」

そんな水月の言葉にアタシは思わず俯く。

途端、ふっと目の前に影が落ち甘いココアの香りが鼻をくすぐって
そして・・・

ちゅ、と軽く重なった唇。

びっくりして顔を上げ、ぱちりと瞬きすれば

「なまえの唇、苦っ」

「ちょ、雰囲気ぶち壊すようなこと言わないでよ」

照れ隠しなのか、顔をしかめて水月がふざける。

「あははー」

「・・・もう」

でも、そんな水月が大好き。


彼との初めてのキス、それはココアとコーヒーが混じったbitterでsweetな不思議な味がした。




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