お星さま、どうぞ[水月夢](ぎざぎざ。コバトさまより)


”ここに、お星さまをいっぱいに集めてきてね”

そう言って、空っぽの瓶を手渡されたボクはあんぐりと口を開けた。

なんだそれ。

絶対に無理な話じゃないか。

「それができたら、キミとの交際も真剣に考えてあげる」

なんて、そりゃあんまりだ。

ボクははぁ、と絶望のため息を吐きながらとぼとぼと歩いた。

まったく、あのおねーさんもおねーさんだよ。
ちょっと可愛いからってさ。

ボクのことも、いつまでたっても子ども扱いだし。

星を集めろ?

そんなの、サスケが一年中にこにこ笑ってるってことくらいにありえない話だ。

いっそのことこの瓶いっぱいにヒトデでも詰めてやろうか。

「あーあ」

それって結局は諦めろ、ってことなのかな。

そう、一人ぶつぶつと呟けば

どん、数人のガキンチョにぶつかって危うく瓶を落としそうになる。

「危ないなぁ、ちゃんと前見て歩きなよ」

ボクはぷうと頬を膨らましそして
「あれ、こんなところに駄菓子屋さん」

来たときは気付かなかった、小さな駄菓子屋を見つけた。

店先に並んだ色とりどりの飴玉や甘いお菓子に子供が群がって

『みて、おほしさまだよっ』

そう言って、ひとりの子が掌一杯に何かを乗せていた。

お、ほしさま?ボクはちょいと背伸びをして覗き込む。

「・・・っ」

ああそうか、なるほどね。

ボクは

「おばちゃん、これ頂戴」

空き瓶に”お星さま”をいっぱいに詰めてもらった。

―・・・

まだかなまだかな、とそわそわしながら待つこと数分。

ようやく現れたおねーさんは相変わらず

「どう?お星さまは集められた?」

なんて、ボクのことを馬鹿にした様子。

だけど

「もちろん」

ボクが自信たっぷりに頷くと

「・・・嘘」

少しだけ驚いたような顔をして

「はい、お星さまっ」

ボクが差し出した、真っ赤なリボンがかかった瓶を見てさらに目を丸くした。

「そういやおねーさん、もうすぐ誕生日でしょ?」

「・・・」

「これ、ボクからの誕生日プレゼントも兼ねてるからね?」

「・・・」

「で、あの約束だけどさ」”星を
集めてきたらボクと付き合ってくれるって、あの約束”

もちろん、オッケーなんだよね?

そう、小首を傾げて尋ねれば

「・・・だ、ダメだよだってこれは本当のお星さまじゃないし」

なんて、おかしなダメ出し。

「え、だっておねーさん」

本当のお星さま、なんて一言も言わなかったでしょ?

「・・・う、」

そうだけど、何てもごもごと口ごもるおねーさんにボクは

「約束はちゃーんと守ってもらわなくちゃ、ね」

にぃ、と笑って見せた。

ボクがおねーさんにあげたのは、駄菓子屋さんで見つけた色とりどりの金平糖。

それは小さな小さな、お星さま。

「ね、ボクと付き合ってよ」

もちろん、断られる理由なんて何もない。

「し、仕方ないなぁ」

なんて、おねーさん顔真っ赤だし。

ボクは瓶のなかの金平糖をふたつ摘んでひとつは自分の口のなか、
そしてもうひとつは

「はい、お星さまどうぞっ」

おねーさんの口のなかへぽん、と放り込んだ。


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