pillow of the magic[水月夢](ぎざぎざ。コバトさまより)

ごろん、と水月が寝転んだのはアタシの膝のうえ。

正確には太ももに頭を乗せているワケだがまぁいわゆる膝枕ってやつ。

「ふふ、なまえってやわらかくてあったかくて気持ちよくていい匂いー」

「ちょ、やめてよ恥ずかしいよ」

すりすりと頬を寄せる水月の頭をぐいと押しやりアタシは辺りをキ
ョロキョロと見渡した。
こんなとこ、誰かに見られたら・・・。

「ダイジョーブ、今日は誰もいないよ」

そう言ってアタシの内心を見透かした水月は

「それに、ボクたち恋人同士でしょ?」

”こんなことしてても誰も咎めたりはしないって”

にぃ、悪戯っぽく笑った。

「そ、そう・・・だけど」

でもアタシ足太いから、なんて照れ臭いのをそんな理由で誤魔化した。

アタシと水月は小さいときからどこに行くのも一緒で将来の夢は水月のお嫁さんなんて言ってたくらいアタシは水月のことが好きだった。


だけど、肝心の水月はただにぃっと笑って

”ボクもなまえのこと、好きだよ”

まるで猫や犬、はたまたヨーグルトを好きだというような感覚で言うばかりだった。

だから「ねぇ、いい加減ボクと付き合ってよ」

そんな、告白っぽくない台詞を言われたときは正直耳を疑った。

だって、まさか・・・ねぇ。

「え、それって・・・アタシのことが好きだから、だよね?」

「そりゃそうでしょ、嫌いな相手に言うわけないじゃん」

「でも水月の好き、は犬とか猫とかヨーグルトとかが好きっていうのと同じでしょ?」

「失礼な、ボクだって誰かを好きになる感情くらい持ってるよ」

「ホント、に?」

「ホントに」

「・・・」

嬉しかった。

だってアタシの夢は水月のお嫁さんになることだからそれにはまず恋人同士にならなきゃダメなワケで・・・幾度となく水月の口から発せられた”好き”が”ライク”ではなく”ラブ”に変わった瞬間だったから。

「ねぇ、水月」

アタシは膝のうえに乗せられた白い頭をゆっくりと撫でながら

「アタシね、水月のことずっとずっと大好きだったんだよ」


そう言って髪を一掬い、指先に絡めた。

さらさらと落ちる水月の髪、反応がないことを不安に思いそっと顔を覗き込めば小さく開いた口からはすうすうと寝息が漏れていた。

「もうっ」

アタシは水月の髪をさらに一掬いしぐりんぐりんと指に絡める。

そして

「アタシ、可愛くないしスタイルよくないし性格ひねくれてるし・・・だから小さい時から男の子に構ってもらえた試しがなくてでも水月がアタシのこと可愛いとか好きとか言ってくれるの、嬉しくて・・・馬鹿みたいにはしゃいでそしていつの間にか好きになってたんだよね」

”簡単に、コロッと引っ掛かっちゃうような安い女かもしれないけどでもそれでも水月が傍に置いてくれるなら・・・アタシは幸せだよ”

そう、一人で呟いた。

「ふーん、なるほど」

途端、もぞもぞと膝のうえの頭が動く。

やだ、寝てたんじゃないの?

アタシはかぁ、と顔を赤くし

「ね、寝たフリなんてズルいっ」

水月の頭を払うようにして立ち上がった。

「うわ、ぎゃっ」

どす、鈍い音がして水月が地面に頭を打ち付ける。

知らないよ、もう。

寝たフリして全部聞いてるなんて最低最低最低っ。

「いたた」

水月がぶんぶんと頭を振って付いた葉っぱを振り払う。

そして

「だって、キミがあんまりにもぶつぶつ煩いから寝るに寝れなかったんだよ」

む、と唇を突きだして拗ねたような顔をした。

それにしたって、恥ずかしすぎる。

「・・・」

「・・・」

アタシはもじもじ、と服の裾を摘みながら足元に揺れる草を見つめた。

「ねぇなまえ」

暫しの沈黙を破ったのは水月の方。

”もう一回、膝枕してよ”

そんな台詞にがばりと顔を上げれば

「ダメ?」

こくん、と小首を傾げてにぃっと笑う水月。

だって、こんなとこ誰かに見られたら・・・アタシはさっきと同じことを思いつつ

「ダメ、じゃない」

すとん、腰を下ろした。

「ふふ、なまえってやわらかくてあったかくて気持ちよくていい匂いー」


水月もまた、さっきと同じ台詞を吐きながらすりすりと頬を寄せる。

「なまえ、だーいすきっ」

「うん・・・アタシも」

”だーいすきっ”

アタシはふっと微笑んで膝のうえで気持ち良さそうに目を閉じる水月のおでこにちゅ、軽くキスを落とした。

ムムマッファはお互いが素直に、そして幸せになれる魔法のpillow。

.
- 1 -

[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ