知っている(家佐)
 2015.09.04 Fri 00:57

・家康→佐助風味の家康×佐助
・佐助視点
・現代学生パロ
・学年は学バサを参考
・季節は冬
・ビックリする短さ

以上のことにご理解いただけましたら、本文へとお進み下さい。














『知っている』





好きになって欲しいと言われ、戸惑った。
「俺様、別にあんたのこと嫌いじゃないけど。」
素直に述べれば、相手の眉間にシワが寄る。
あらあら、徳川の旦那ってば。いつもの柔和な二枚目が台無しですよ。
「そうではない。わかっているのだろう?」
さて、どうでしょう?

曖昧にはぐらかす内にチャイムが鳴って、それぞれの教室を目指して歩き出す。
来週の天気予報では、ついに雪のマークが付いていた。そんな冬真っただ中なこの季節、昼休みとはいえ、屋上にいる物好きは俺様達二人だけだったようだ。
今一度見回した屋上にも、そこへと繋がる階段にも、他に人の気配はまるでない。
つまり、この背中に突き刺さる視線の主は徳川ということになる。
なにやらまだ言い足りぬらしく、痛いほどの視線をビシビシと感じる。
(ま、振り向いてなんてやらないけど。)
だってほら。捨てられた子猫なんかと一緒でさ、情が湧いたら厄介じゃん。優し〜い俺様は、そーゆーの結構弱いんだよね。
だから、
「猿飛!」
名前を呼ばれて、ドキッとした。だって、振り向くしかないじゃん。呼び捨てだったけど、後輩の呼び声を無視するほど冷たい人間になった覚えはない。
言ったでしょ?俺様、優し〜いんだってば!
「…なに?」
なんでもない風を装って笑顔で振り向くと、そこには想像とは違う表情があった。
か弱い子猫じゃなくって、覚悟を決めた虎の顔。
階段を一段飛ばしで下りてきた徳川は、がっしりと、その腕の中に俺様を閉じ込めた。
「ワシは、お前が好きだ。」
だから、お前もワシのことを好きになってくれ。
…だなんて、とんだ自己中野郎だ。

なのに、なんで俺様の心臓はうるさいんだろう。

「だから、別に嫌いじゃないってば。」





END



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