【第17回】
 2017.07.06 Thu 04:29


鏡子は、上半身を完全に露わにした。

同性しか見ていないとはいえ、痛々しい光景――のはずが、何かおかしい。

鏡子から贖罪の真剣さが感じられない。

無言で神妙な表情で脱いでいったが、“他人に厳しく、自分にはもっと厳しく”がモットーの鏡子にしては、淡々としすぎている。

これも違うと思い始めたとき、ドアがノックされて、

入ってきたのは、松葉杖のお姉ちゃんだった。

お姉ちゃんは、まず半裸の鏡子に驚き、それから、私に深々と頭を下げた。

無言だったが、私にもわかってしまった。

お姉ちゃんが、私を……。

「あーあ、若葉は単純だから、絶対うまくいくはずだったのに」
「これはこれでアリよ。……で、なぜスカートを脱ぐ?」
「初志貫徹ですよ」
「もうやめなさい。意味なくなったから」

この二人、
理恵子先輩と鏡子は、瞳が犯人でないなら、お姉ちゃん――佳奈恵先輩しか犯人になりえないと確信していたのだ。

そのうえで、鏡子は犯人になってやることにした。

私と佳奈恵先輩の関係を終わらせたくなかったから――。

私と鏡子の関係が終わるというリスクは考えないのか。

「永遠のライバルだからね。これくらいで終わらないわよ」

心なしか残念そうに服を着ていく、鏡子はそう言った。

おさまらなかったのは瞳で、姉として慕っていた佳奈恵先輩を許せず、
素手で一発だけ、“姉”の頬を打った。
(濡れ衣を着せられた恨みは含まれていないようだった。ま、自業自得だし)

それでも、お姉ちゃんは無言だった。

ここで、同じく無言だった菫ちゃんが、「あれっ」と声をあげた。

「松山先輩、松葉杖ついてますよね。片手ですよね。そんなんで、重たい入江先輩を突き飛ばせるんですか?」

重たくて悪かったな。

でも、それは正しい指摘だった。
思い出した。
確かに私は、“両手で”突かれた。

松葉杖のお姉ちゃんには、不可能犯罪のはずだ。

まさか、お姉ちゃんも真犯人じゃないっていうんじゃ……。

「突き飛ばせるのよ。だって」

初めて口を開いたお姉ちゃんは、
松葉杖を椅子に立てかけ、乃木坂だか欅坂だかのナンバーを踊った。きれいなターンにスカートが広がる。

……お姉ちゃん、治ってたんだ。
――――――――――


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