第16回【真相】
 2017.07.03 Mon 21:57


理恵子先輩が口を開く。
「若葉、もうこうなったら、正直に言いなさい。あなたは瞳に突き落とされたと思って、かばっていたんでしょう」

「……そうです」
「今でも、そう思う?」
「思いません」

「だいたい、なんで瞳をかばおうなんて思うのか……」
鏡子の言葉がとても辛辣に聞こえた。

「入江先輩がよほど平和主義者ということでしょうね」

違うよ。
でも、仕方ないよ。
私が背負う十字架の重さなんて、わかりようもないから。

「ともかく、突き落とされたということは、これではっきりした」
「若葉も証言したし」
「問題は、誰が突き落としたか」

理恵子先輩と鏡子で、名探偵コンビ結成らしい。

そこへ、菫が割り込んだ。
「入江先輩が死んで一番トクするのは誰かと考える。推理小説の基本ですよね」
「殺すな」
「すると、すぐに一人、該当者が思い当たるんです」
「私だろ」

こともなげに鏡子が言った。

「若葉がいなければ、私が学年トップなのよね」

鏡子の“自白”の半分も、私には理解できなかった。いや、理解するのを拒否していた。

「一日ぐらい病欠すればいいのにね。こいつ皆勤賞ねらうぐらいだからなー」

耳をふさぎたくなるような、鏡子の言葉。私を“こいつ”なんて呼んだのも初めてだった。

「今なら、瞳に罪をなすりつけられますからね」
「そういうことよ……でも、喋ったらすっきりしたわ……さて、罰を受けなきゃね」

鏡子は立ち上がった。

「警察行きましょうか。付き添いますよ」

菫も立ち上がった。

「警察だけは勘弁してくれないかな」
「なに甘えてるんですか」
「だって、若葉だって、それは望まないはずよ」

いきなり振られた。

確かに、鏡子のやったことは重大犯罪だ。許されることではない。

でも……。

「なら、どうするんです?」
「必殺・全裸土下座」
「……バカにしてます?」
「まさか」

鏡子は服を脱ぎだした。
真剣だ。
そして、見守るほうも。

こんな展開になって、私はどうしたらいいの。

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