健二の従妹設定捏造
肩まで伸びた黒い髪に下がった眉毛と気弱な目元。
どこかの誰かさんを彷彿させるのに十分なその外見に思わず声が漏れた。
「お兄、さん?」
「は?」
「人違いでしたごめんなさい」
気弱そうな表情が一転、眉毛が釣り上がり口からは不機嫌を絵にかいたような台詞が飛び出した。一瞬でもこの人があの健二さんに似ているなんて思ってしまった僕はきっと何かしらの異常を抱えているのだろう。
「あなた健二兄さんの知り合い?」
「明日眼下と耳鼻科に行った方がよさそうだな」
「ねぇ、健二兄さんの知り合いなのかって聞いてんですけど。独り言言ってないで答えてください」
「あんた…お兄さんの妹?」
「従妹」
「(似てねぇ)」
「それよりあなた、もしかしてあの女の親戚?」
「あの女?」
「健二兄さんをたぶらかした女のことです」
「たぶ…ああ、夏希姉?」
「その人紹介してください」
「いいけど、なんで?」
「縄張り争いです」
「は?」
「動物界では良くある話でしょう」
「人間界にはないよ」
「人間も動物!」
「(どうしよう、すごく変な子に捕まった)」
「私はあんな女認めないです」
「あんな女って」
「健二兄さんにはもっとお似合いの人がいるんです。もっと強くて、優しくて、芯の強い。そう、キングカズマのような!」
「ぶっ!!」
「なんですか、汚い」
「あんたこそ何言ってんのアホなの?」
「健二兄さんはアホじゃない!」
「あんたのことだよ」
「…まさか、あなたもキングカズマが男だと思ってる性質ですか?」
「思ってるも何もキングカズマは俺、」
「というか男だったらドン引きです。兎キャラクターが何を示してるか分かります?寂しがりの甘えん坊ですよ。そんなのがキングだなんてチャンチャラおかしい」
「……」
「何か言いましたか?」
「いや、なんでも」
兎好きで何が悪いんだよ、と悪態つきそうになった口を抑えて言葉を濁した。なんで俺はこんな今出会ったばかりの女に侮辱されて言い返せずにいるんだろう。大体あんた、
「さっきはキングは強くて、優しくて、芯が強いって言ってなかったっけ?」
「おまけに寂しがり屋で甘えん坊。母性本能の塊たる健二兄さんにはもってこいの女々しい雌でしょう?」
「め、」
「おまけに恋愛がベタそうだから浮気する心配もなさそうです」
「……」
「ゲームバカというのがたまに傷ですが、まあ健二兄さんもゲーム好きだしそこは良しとしましょう」
「……」
「なんですか」
「いや…」
「なんで泣いてるんですか」
「うるさい、お前なんか嫌いだ」
佳主馬とカズマ
(お兄さんの従妹に会ったよ)
(あ、そうなんだ。可愛かったろ?)
((どこが…?))
20130709