「舞姫」のような君蛾が産み落とした卵から君が孵化するクリスマスツリーの下で自傷する君が泣くのを見たくなくて嘘をついた




男は、飽きるんだろ?
捨てられるんだろ?女って

男は男を、捨てない?
兄は、弟をかわいがれるもん?

「キルア、キル、好きだよ」

服を着ようとすると、必ずイル兄の手に止められる

「…うん、俺も…イル兄好き」

少し髪の流れた額にキスしてみるも、ロマンティックに運ばれなかった

「ぅわっ!」
「誰かで練習した?ミルキででも」
「は、」

両手首をギリギリと掴まれ、ベットに倒される

「し、してない、しない、…何で」
「勇気を出したの?頑張ってこなれた感じでしてみたの?」
「…何で…そんな言い方…」

…ひでえ
分かってんだろ?
妬いてんだろ?
うれしいの、半減すんじゃん

喜んでほしいの、そんなに悪い?
俺頑張っても、全然な訳?無駄?

余計なこと、すんなってことかよ

「俺のなんだよ。キルアは俺だけのものなんだよ。俺のことだけ考えて俺のことだけ見て俺だけに股開いてたら良いんだよ」
「あっ、やっ、いた、…イル、あんっ」

結局、どうなの
うれしいの
喜んでもらえたの
少しテンション上がったの
気持ち、ごっちゃごちゃ?

「キル、イきそー……」
「っん、ん、う」

イル兄がパラノイア?
俺が兄貴のパラノイア?

パラノイアの…パラノイア?



******



相手が悪い、相手が

「変な女を拾う男が?いたの?両方殺した?」
「そういう男って、助けてやる自分に酔ってるの?」
「生まなきゃいいんじゃない、両方」
「そっからぁ?」

兄貴だもん
相手が悪過ぎる

「生まないか、生まれる前に殺しておく」
「中絶?」
「母親が蛾みたいな、虫けらな場合ね」
「母さんは違う?」
「キルア生んでるから」
「生んでなかったら?」
「ん?どうだろ。女は結婚妊娠で勝負するけど。生まれたら個人的に戦うでしょ」

親は親に代わりないけど
自分の出来は自分次第?

キルアには刺さらなかった
俺には、俺個人的には
兄貴どこにそんな隠し玉持ってたの

二人を部屋から追い出さないでおいて、いわくつきの兄貴の秘密が一枚剥げた



*****



庭に出たついでに冬に相応しいもみの木を親父が持って来る
カルトが紙で飾りを、ミルキがデジタルに電気をつける
細かいことは、執事任せ
てっぺんに飾る星で、ミルキとカルトが微妙に奇妙な空気
そもそもカルトは星を作る、妙に沢山
俺はてっぺんの星は二人に譲る
イル兄が来たら、5年連続カルトの星が選ばれた
ミルキを宥める執事がどことなくよろこぶ5年間
でかい木に意義があると思う
イル兄も適当に眺める
ごちそうよりプレゼントより、この時間がいいよなあと思う
正解だとは、まだ自覚してない

「クリスマスって何?メリーさんの誕生日?あれ?キリストって何?」
「お前全部知らないじゃん」
「興味ねー」
「プレゼントは?」
「いるー」
「キリストの誕生日でしょ?」
「何で祝うの?」
「プレゼント」
「いる」
「何か、キリストにも非はあるんだって」
「ふーん」
「神様だからって威張ってたらなぁ」
「ミルキも威張ってんじゃん」
「神様じゃねーし」
「何で神様の話になったん」
「バカ」
「キリストは神の名前なのですが、その神も裏切られて、死ぬので」
「裏切った奴を庇う奴に最近会った」
「…だれ?」
「興味ねーんだろ?」
「キリストとお前には興味ねーよ、ブタ」
「当たんなガキ」
「死ねデブ」
「ちょっと。ケンカしないでよ、何で何で」
「…あの、キリストもユダより、裏切りたくはないので…」

神の誕生日にお祝いの木の下で神を冒涜なんてステキね、と手を握り合う両親

罰がくだるか?
神が自ら死にたくなるか

メリクリー
ブラボーゾル家



*****



俺が『辛い』って言ったら、『俺がいるのに?』

『苦しいよ』、『一緒だね。キルアかわい過ぎるから』

もー、言わない
何も、黙っておく

イル兄のそんな顔見たくないから、嘘をつく

心の中の愛が泣くだけだ







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