毒入りだったのは林檎ではなく彼のキスきみが珍しく怪我をした日のことまたくだらない一日が始まる真夜中、君の遺体を浴槽に浮かべる愛を込めて、ファッキュー!君はいらない人間でしょ?




ああ、ああ、ああ
しあわせ。だ

しあわせだ、解放されたんだ

執事達がバタバタと
親父に連絡をと
ミルキ様どう致しましょうと

ほっといてくれー
俺は解放されたんだ

罪の果実に仕込まれた毒が強過ぎて俺は死ぬんだーーーーー

「っがほっ、ごほっ、うっ、げぼぉっ」
「ああ、良かった」
「、ごっ、がっ…っがはあっっ、」

キルア様キルア様と
キルアこっち来いケアすると
ミルキ終わったら俺呼んでと

イルミ様が毒を吸い出し

「…、…、…っう、あ…、」

涙がボロボロと
ボロボロと涙が
涙が涙が涙が涙

解放…してくれ



*****




「キル、どうしたの」

いっちばん会いたくない人に、帰宅するなりつかまった
本人はなぜか執事室を通って仕事に向かうとこで、俺はゴトーに処置してもらおうとソファーを血で汚したばかり

「…しくって、ケガした…ちょっと血ぃ出ただけ…」

ふんぞり返っておきながら、焦る
刺されてもいたくないし、どんどんソファーに血が染み込んでもちょっとと言い張れる

だけど、ミスは見逃してはもらえない
責められ、叱られ、しつけられるんだろう

往生際悪く、いた

「てか…ねえ、早く消毒しないと。何のんびりしてるの?包帯、包帯ってどこ?」

包帯を探す兄貴に頭がついていかなくてぼんやりしてたらゴトーが来て
差し出がましい様ですが、イルミ様任務の時間では、キルア様は後は私が

兄貴の足でも間に合わなくなるくらい、兄貴はいた
その間俺はぼんやりしてた

ソファーが汚れるではなく、キレイなとこで処置してって持って来させた布団に俺を寝かせ
消毒が染みる俺をじっと見ながら雑にやらないでとゴトーに頭を下げさせ
ご要望の包帯が出た時には分かりやすいとこに置いといて

あ…あれ?

責められず、叱られず、しつけられなかったことで俺はあと一回だけミスろうと、ケガを慈しんだ



*****



くだらなくない日なんて、あるんか?
朝起きる日と、昼、夜に起きる日
起きたらごはんの日と、食べない日
仕事に出かける日と、訓練の日
お菓子、ゲーム、多少の勉学
風呂に入れる日入れない日、入らずに寝る日

寝るから、念入りに入る日
抱かれる日、抱かれない日
寝かせてもらえない日、寝ないで抱かれたい日
抱かれない日以外は、くだらないんだけど



*****



キルアを抱えた兄貴とすれ違った

「珍しい。へばった?」

まだ耐えられない訓練がこいつにもあるのか、と横目で見た顔を馬鹿にしようとした

「うん。ちょっとね、やり過ぎちゃって。汗いっぱいかいたし、中からかき出さないと」

スタスタ風呂に向かう、キルアを抱えた兄貴

キルアはぐったりしていたけれど、傷もなく血もついてない
深く目を瞑り、汗で湿った顔、髪もしんなりするくらいに汗
血色の良い頬、熱い息と空気から伝わる体温

ある意味、訓練?
どんな、訓練だよ
キルアがへばるくらいに…

何ラウンド訓練したんすか



*****



「、やだ、い、やだ、兄、貴ぃっ」

だめだめだめだめ
絶対逃がさない離さない、解放なんかしてあーげない

「かわいい。かわいいよ、キル。かわいい、だいすき」

あいしてる
あいしてるの、キル
キル以外、キルじゃなきゃ、キルしか、キルのみ、キルだけ
キル、only

「、やぁだ、やだ、たのむ、っおねが…」

あいは込めてる
合意じゃないけど、あいは

「っひ、っ」

椅子に縛られ脚を上げられ青ざめるキル
白くて細くてそそる体がたまらないよー

「せー、のっ」
「っう、ぎゃあぁあああぁあっっっ」

愛は込めて、ファック・キルア!



*****



イルミが継ぎなよ
結構な意見を聞くよ?

「長男なのに、歓迎されてないみたい」
「あー、かもね」

ちょっとは傷ついたら?
僕に関心ないからだろうし、大抵の人はきみより低レベルだし、キルアまみれだからって、ちょっとは

「きみ生まれたからいいんじゃないの?キルアを生みたかったら下の二人いらないし?」
「三人とは思ってたみたいだし、女の子がほしかったんじゃない」

女の子…?ん?

キルアの歪みがイルミの所為って、違う
歪んでないのに、言われるキルアがおかしい
トラウマなだけでしょ、イルミが

「女の子相手にもイルミはそうなの?妬けちゃうよ」
「え?」
「屈折した愛?だっけ?」

きょとんとした顔のきみにぶつける

黒々艶やか溢れそうな髪が、何でそこまで伸ばした豊かな髪が、美しい
シャープな輪郭、長い首、バレリーナにも恨まれる

細い眉も闇の瞳もすました唇も、細いのに長い脚があーなったりこーなったりたのしめる体も

「お前とキルの相手しかしたことないから分からない」
「光栄だなあ」

僕にはきみが、いる人間






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