看桃
 2012/03/17

※ももまつりでの看桃続き

















「マジで、来やんの…」

「?来るっつったろ?」

森奥に隠されたキルネンコの屋敷。
入口の扉を開けた形のままご機嫌斜めに呟くキルネンコと、対称的にご機嫌なカンシュコフ。

深夜に電話で来ると言っていたカンシュコフは本当に来た。
昼頃になる、が早朝に切り替わって。

おかげでさっき眠ったばかりのキルネンコはチャイムで叩き起こされる羽目になり、部下がいない時間帯故に寝間着、加えてボサボサな頭のまま来客を直々に出迎える羽目になった。

カンシュコフが笑う。

「あっはっは!すげえ頭!お前まだ寝てたろ」

「………時間って分かるか…?朝5時だぞ…5時…」

「悪い悪い。朝飯作ってやるからそれで帳消し、いいだろ?」

「………」

未だ不機嫌なままのキルネンコは胸倉を掴み思い切り引き寄せた。


 チュ


と唇に触れるだけのキスを落とす。

「…へ?」

不意打ちに反応できなかったカンシュコフがぽかんと見つめ返してきた。

間近で嘲笑し、踵を返す。

「この位は寄越せよ…ヘタレ」

「なっ………!お、前勝手にキスしたら怒るだろうが!」

肩越しに振り返って更に嘲笑を深めた。

「だからヘタレなんだよ。精々この俺が言い返せねぇテクニックでも身につけてくるんだな」

「…電話切って逃げたくせによく言うよ」

ぽつりと呟かれた言葉に夜の電話口のセリフがフラッシュバックする。



『おやすみ、キルネンコ…良い夢を』



低く甘い、睦言を囁くようなあの声。

頬が熱を持った。

「…ッうるせぇ!さっさと飯作れ!」

「はーいはい。ほんっと素直じゃねえなぁ…」

「………」

今度こそ歩き出す。
後ろで扉の閉まる音がした。

五月蝿い心臓の音を振り切るよう殴りつけた壁。
簡単に崩れる壁と反比例して心臓は更に存在を主張する。

「…クソ…」

悔しい。

何故言葉の駆け引きは得意な自分がその点はドがつく素人にここまで言い負かされているのか。

認めない。

未だ一度たりとも手を出してこれないヘタレた奴にここまで乱されているなんて。

「………」

そういえば、と考える。

カンシュコフは手を出してこないどころか彼からキスを求める事すらない。まぁキスに関してはキルネンコが照れ隠しに拒絶するからだが。
それを差し引いても彼とは全く、それこそストイックと言っても過言ではない程色事と無縁な付き合いをしている気がしてならない。

例えるなら、兄弟のような付き合い。

実際カンシュコフは5人兄弟の長男だというし、ひょっとしたら手のかかる弟が増えた程度にしか思っていないのでは。

言いようのない不安に駆られ部屋の鏡で見た表情は、自分でも驚く程情けないものだった。

「…女みてぇ」

くだらない事で悩んで、勝手に落ち込んで。


 ガシャンッ


鏡を拳で粉砕して、嗤う。

「フ、ククク………馬鹿じゃねえの?何で俺が悩まなきゃなんねえんだ…?」

そう、悩む位ならこっちからさっさと動いて結果を出してやればいい。

勿論、無理矢理にでも自分の望む結果に。

「キルネンコ?!」

鏡が割れた音に飛んできたカンシュコフに笑顔を向けた。

凶暴なまでの肉欲を滲ませた笑顔を。


「なぁ…ヤろうぜ…?」


突然そう言われてカンシュコフが理解できる筈もなく。

「や………やるって…?」

くつくつと喉で笑いながら部屋へ引き込み扉を閉める。
この際寝起きで髪が乱れまくって格好がつかないのは気にしない。

壁に押し付け、耳元で囁いた。

「セックス、だよ。いいだろ…?まだ一回もヤった事ねえし…」

「ハ…ハァ?!ち、ちょっと待て。ま、まず落ち着こう、な?考えてもみろ。飯食ってねえし、何よりまだ朝だろ?」

ゆるりと手をカンシュコフの胸に当て、思わせぶりに撫でる。

「どうせアンタ今日の晩には帰るだろうが…少しは楽しんでけよ…」

「ッ…!」

びくりと跳ねる体。速くなる鼓動。
少なくとも性の対象にはなりうるようだ。

それに安堵して、手を下へ伸ばした。
が、途端に手首を掴まれ制止される。

「…何」

耳元から顔を上げて見やると困ったような笑顔を浮かべていた。

「こっちの台詞だよ。どうした?いつもはもっと聞き分けれんのに…良い子だからちょっと待て…な?」

幼子に言い聞かせるような言葉が無性に腹が立つ。

やっぱりコイツは…

首を掴んで思い切り投げ飛ばした。

「ぅ、わ………!」

狙い通りベッドの上に落ちる。というかぶつかると言った方が正しい勢いだったが。

起き上がる前に腹にのしかかり、自分の着ている寝間着の釦に手をかけた。

「あ〜〜〜…もうやめだ、やめ。まさかここまでヘタレだと思わなかったよ」

「なっ…誰が…!」

「ヘタレだろうがよ!手も出そうとしねぇしキスだって一回拒否っただけで二度としかけて来ねえし!」

言葉にすればする程苛立ちが増してくる。
釦を外すのを中断して胸倉を掴んだ。

「しかも何だその態度?!俺はアンタの弟じゃねぇ、恋人だ!俺を庇護してりゃそれで満足なのかよ?!」

矢継ぎ早に怒鳴ったせいで息が荒くなった。
一度大きく深呼吸して、カンシュコフを睨み付ける。

「………何か、言い分は?」

ゆっくり手が伸ばされ、髪を撫でられた。

「…弟だと思った事は一度もねえよ」

「嘘つけ」

「本当だって。けど、そう見えてたんなら謝る。ごめん」

「じゃあ何で抱こうとしない」

ぴたりと手が止まり、見る見るうちに赤くなるカンシュコフ。

「…何」

「いや…それは、だな…その………」

煮え切らない態度にまた苛立ちが強くなった。
左手を後ろに伸ばし、カンシュコフの自身をズボンの上から撫でる。若干力が入り過ぎたのは仕方ないだろう。

面白い位跳ねる体。

「ッあ…!」

「3秒以内に答えろヘタレ。はい、さ〜ん…」

グリ、と手の平で押した。

「ぃ、あ…!ま、て…ッ言う、から…!」

「に〜ぃ…」

反応を見せたそこを軽く握り込む。

「くぁ…!だ、から一度、止め…!」

「い〜ち…」

そのまま勢い良く先端に向かってスライドさせた。

「ぁ………!ぅああぁッ!!」

一際大きく跳ね、次いで脱力する。
鼻で嗤ってやった。

「ハッ………堪え性も何もあったもんじゃねえな。んなに溜まってたのかよ…この早漏」

「ハッ…ハァ………!っおま…」

言い募ろうとする口を右手で塞ぐ。ついでに忍ばせた薬を押し込んだ。

「残念だが時間切れだ。黙って寝てろ」

口の中で簡単に溶けるそれは即効性の痺れ薬。体は動かせなくはなるが感覚は残る、尋問等に非常に役立つ違法薬だ。

「?!ッア、…?!」

ただ一点、強過ぎて最初の内は舌も回らなくなるのが困った所。

ズル、とカンシュコフのズボンを下着ごと下ろし、顔を近付けた。

「………さて…じゃあ勝手にヤらせてもらうが…まぁアンタも諦めて楽しめ」

「………ッゥ…!」

抗議するような視線を無視して、精を放ったばかりで萎えているそれを口に含む。青臭さに少し眉を顰めたが、構わず舌を這わせた。

「ふ…ん、ぁ…」

「ッ………!」

薬の効力はそう長くない。特に絶えず刺激を与え続けていればすぐ切れるだろう。

(…急ぐか…)

一度カンシュコフの自身から口を離し、代わりに自分の指を銜えた。

「…?」

多分動ければ首を傾げているカンシュコフに、指に舌を絡ませながら妖艶に笑いかける。

「流石に慣らさないと入らねぇから…な?」

「ッ………ォ、イやめ…!」

どうやらもう舌は動くようで、理解できる言葉を発した。
だが相変わらずの制止だったので無視して寝間着の下を脱ぎ捨て、肌蹴たシャツ一枚だけの姿になる。

普段排泄以外に使う事のない後孔へ濡れた指を伸ばした。

「ッく、あ…ぁ…ッ」

当然ながら使った事も弄った事もないそこはただ異物感があるだけで、快感なんて拾えない。

それでも。

「ふっ………ぅ、ハァッ…!」

異物感に慣れると入口が少し柔らかくなり、拡げられるようにはなった。

「…キ、ル………」

呼び掛けに答えようと顔を上げると、額から汗が流れた事に気付き、予想以上に体力を消耗していたのかと驚く。

辛そうな表情で此方を見ているカンシュコフに「ああ」と嘲笑を与えた。

「ほったらかされて、辛いか…?」

「ち、が…お、前が…」

「生憎今手が塞がってんだ………口だけで我慢しろ」

言葉には耳を傾けず再びカンシュコフの自身を銜え、舌で愛撫する。同時に指を動かし孔を解すのも忘れない。

額から流れる汗がひどく不快だが、目を閉じて耐えた。

「ハァ…ハッ………ン、ぅ…」

閉ざされた視界。その分見つめられる気配を肌が敏感に感じ取り、体が熱を持つ。

「ッあ…キル、ネンコ…やめッ…くぁ!」

びくりと跳ねるカンシュコフの体に、薬の効力が切れかかっている事を悟った。

ここで止められたら何の為にこんな痴態を晒しているのか分からない。

(…まだ、万全とはいかねぇが…仕方ねえ…)

指を引き抜くと腸壁が引きずられ、言い様のない不快感に襲われた。

カンシュコフの自身からも口を離して、その下肢を跨ぐ。

「ハァ…ッすぐ、イったりすんなよ…早漏………!」

孔にカンシュコフの自身をあてがい、一気に腰を落とした。


 ズブブッ


「ッア、ーーーッ!!」

思っていたより激しい痛みに声にならない悲鳴が上がる。
視界が明滅し、全身から汗が噴き出した。

「キ、ル………やめっ…抜け、て…!」

カンシュコフの訴えに生理的な涙を流しながら睨み付ける。
この後に及んでこの男は拒否するというのか。

「何、で…ッ何で受け入れようと、しねぇ…!気持ち良くない、とか言う…のかよッ」

「違…ぅ…そう、じゃなく…」

「じゃあ…何だ!さっさと、言え…腰抜け…ッ!ヘタレ、早漏…!」

思い通りにならない、言葉での説明すらしないカンシュコフに募る苛立ちがピークに達した。

痛みからとは違う涙が溢れ出す。


「………俺だけ、欲しがって…
ッアンタが好きなんだよッ!一番近くで感じたいんだよッ!俺を欲しがれよッ!



―――頼むから、愛してるって伝えてよ…!」





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