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お礼は「身長差」をテーマに倉南→豪風→拓京の3つです
(タイトルはひよこ屋さんにお借りしました)




でこぼこな背くらべ(倉南)





南沢さんは、たまにすごく深刻な顔をしていることがある。眉を少しだけ寄せて、ちょっと俯いて。南沢さんは性格は悪いけど、顔は整っている。だから、そんなときでもかなり絵になる。
さらりと流れる紫の髪、ちょっと伏せられて目の下に影を落とす長い睫毛、きゅっと引き結ばれた形のいい唇。
愁いを含んだため息でもつこうものなら、周りにいるやつは十中八九見惚れる。しかも女はもちろん、男でも、だ。断言できる。
事実、俺もそうだし。

だけど、そんなときは見惚れてる場合じゃないのだ。
周りのやつらはほんと絵になるわね、で済むかもしれないが、俺はそうはいかない。
だって、南沢さんが深刻な顔してるってことは、あの人がまた何か悩んでるってことで。

あの人は、よく悩む。変に深刻な方に考える。そもそもあの人は、考えすぎなのだ。なんであんなに難しい方にばっかり考えがいくのだろうか。不思議なくらい。俺には理解できない。頭いいって、実はすごく難儀なことなのかもしれない。南沢さんを見てたら、ときどき思う。
しかもあの人が質が悪いのは、それを溜め込むことだ。俺がいくら歩み寄ろうとしたって、あの人は「倉間にはわからない」の一点張りなのだ。
バカにしてんじゃねぇよ、って思う。まぁ確かに、俺は南沢さんが感じているような憂いを感じ取ることはできないかもしれないし、南沢さんが考えてるような哲学的なこともよくわからない。
あれ、これってなんか、俺がすごくバカみたいじゃねぇ?なんか無性に悔しい、ような気がする。でもやっぱり、俺にはぐだぐだ考えるのは性に合わない。
まぁとにかくそうやって、あの人は絶対に俺に預けてくれない。弱いとこを見せてくれない。で、溜め込んで溜め込んで、最後には抱えきれなくて爆発する。
そのいい例が、月山のときのあれだ。
思い詰めまくった末に、俺に黙って消えやがったあれ。
あれからいろいろあって、俺たちはどうにかこうにか和解した。あの人はとりあえず、俺のとこに戻ってきてくれた。
そして俺は、一つ決めたことがある。



「倉間、またオマエ牛乳飲んでんの?」
「そうですけどなんか文句ありますか」
「いや、なに、背ェ伸ばしたいの?」
「当たり前でしょ、こんなに小さくて我慢できるかっつーの」
「あ、小さいって認めた」
「…るせ」
「伸びるって信じてんの?」
「そりゃーまだ中坊ですから。これからでしょ」

俺は決めた。南沢さんに背中預けてもらえるようになるって。安心して話してもらえるように、泣いてもらえるようになるって。
これはその、第一歩なのだ。まずはこの人よりでかくなる。この人の頭を撫でて、すっぽり抱きしめてあげられるくらい、大きくなる。

年上好きな南沢さんが離れていかないように、つなぎ止めておけるだけの力が欲しいんだ。世の中は難しいこともたくさんあるけど、でもそれだけじゃなくて、笑ってりゃ解決することだってたくさんあるんだって、知ってほしいんだ。
それであわよくば、俺が笑わせてやりたい。

そのために俺は、とりあえず形だけでも、大きくなろうと思う。

「見てろよ、絶対あんたより大きくなってみせますから」
「おー、楽しみにしてるぜ」

そうやっていたずらっぽく微笑む顔も、

「…だから、あんまり待たせんなよ」

今にも消えてしまいそうな儚げできれいな微笑も、

「あんた小さいから、すぐ抜かしてやりますよ」

少しでも早く、俺が守れるようになりたいと思う。






(お前の笑顔に救われてるなんて、)
(まだ言ってやらない)





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