卒業式後に卒業試合が行われたここ、雷門中。今まで一緒に戦った仲間が集まった。
そこには、私の好きな人もいて。
その日に、私は吹雪君に告白された。吹雪君曰く、私のことは結構前から好きだったらしい。私が好きな人は吹雪君だったから、当然のように告白の返事はイエス。
幸せだった。
そして十年の月日が経った。
あの日、卒業試合の日から、私と吹雪君は会っていない。それどころか、連絡もとっていない。
私は、吹雪君の連絡先を知らない。携帯の番号くらい知っていてもいい間柄なのに、私は吹雪君のことをなにも知らないんだ。
『なにも…知らない』
改めて考えたら、私は一応吹雪君の彼女なのに何一つ知らないんだな。吹雪君も卒業試合が終わって直ぐに北海道に帰ってしまうものだから、なにも聞けなかった。まぁ、その時私は携帯を持っていなかったから聞いていたところで連絡はとれなかったのだけれど。
今頃吹雪君はどうしてるのやら。北海道で新しい彼女でも見付けちゃったかな。そう考えると、なんだか無性に悲しくなって泣きたくなってきた。なにもしないまま自然消滅…なんて、ね。
自暴自棄に陥っていると、不意に携帯電話が鳴った。
『誰だろ…?』
見れば、登録していない番号からだった。こういうのって、出ようか出まいか迷う。もしも怪しいとこからだったら怖いもの。
だけど、いつまでたっても鳴り止まない携帯。意を決して出ることにした。通話ボタンを押す。
『も、もしもし…?』
《もしもし。僕だよ》
オレオレ詐欺ならぬ、ボクボク詐欺だろうか。
『ど…どちら様でしょう、か』
《嫌だな、忘れちゃった?僕だよ、吹雪士郎》
『吹雪、君』
《そ。名前ちゃんの彼氏の吹雪士郎》
あり得ない人物からの電話。吹雪君だ。十年振りの、吹雪君の声。
『なんで私の携帯番号知ってるの?』
《円堂君に教えてもらったんだよ》
『そうなんだ』
十年振りに話せたことが嬉しくて、喋りたいことが沢山ありすぎて、うまく言葉にできなくて。なかなか会話が続かない。
《名前ちゃん、浮気してない?》
『してない!…ていうか』
それは此方の台詞だよ。
『吹雪君こそ。私以外の彼女できちゃったんじゃないの?』
「馬鹿だなぁ。できるわけないじゃん」
後ろから引っ張られ、誰かに抱き締められる。耳元からは、今の今まで電話越しに聞いていた声。
「ただいま、名前ちゃん」
『…おかえり、吹雪君』
十年間連絡とれなくてごめん。会えなくてごめん。吹雪君の口から次々と謝罪の言葉が述べられる。そんなの、もういい。だって今こうして会えているのだから。
『もう謝らなくていいよ』
吹雪君が大好きだから!
十年越しの
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遅くなって大変申し訳ありませんでした。
これは果たして切甘というのかわかりませんね…申し訳ない。
リクエストありがとうございました!
120520
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