ふと、家出してみたいと思った。家や家族に不満があるわけじゃないし、親と喧嘩したわけでもない。ただなんとなく。
『お母さん』
「何?」
『ちょっと家出してくるね』
「いってらっしゃい。……て、ええ!?」
あまりにも何事もなかったかのように言ったからか、お母さんの反応が遅れたようだ。追いかけてくる前にどこか遠くに逃げてしまおう。
鼻歌を歌いながら道を歩く。どこいこうかな。財布しかもってこなかったから家出とは言えないんだけど、なんだか清々しい気分。
「苗字さん」
心地の良い声が私を呼ぶので振り返ると、なんとまぁ綺麗な金髪が。亜風炉監督だった。
『監督!こんなところで会えるなんて』
「僕もだよ。苗字さんなにしてるの?」
『家出です』
そう言ったら、監督の目がやけに真剣なものになった。
「どうして」
『え?』
「どうして家出なんかするんだい。家が嫌いなのかい?」
『……』
ああ、どうしよう。ここまで親身になってもらえるとは思いもしなかった。ごめんなさい監督、家出擬きです。
正直に言うと、監督はいつもの監督に戻ったような気がした。
「全く…苗字さんには手を妬かされるよ」
『ごめんなさい…』
「こういうところも、可愛くて好きなんだけど」
私の頭の上に手を置いてぽんぽんと優しく叩く監督。
『……う?』
「なにその反応、可愛い」
可愛い?私今、亜風炉監督に可愛いって言われたの?しかもさっき好きって言わなかった!?
「早く帰りなよ」
『えっ、監督今の!』
「苗字さんが大人になったら教えてあげるよ」
そう言い残して行ってしまった監督の背中を見ているだけしかできなかった。
未来でもまた
------
遅くなった\(^o^)/
照美家出夢どうぞ
120309
戻る