望む
シルバー
抱き締めてくれたっていいじゃない。
それができないなら、手を繋ぐだけでもいいのに。
私たち、恋人だよね…?
何時も、何時でもポケモンのことばかり気にしてる君。
私がポケモンだったら、君はずっと構ってくれたのかな。
シルバーに構ってもらえているオーダイルが、私を見て鼻で笑った。
…悔しい。ポケモンに、あんなに馬鹿にされるなんて。
オーダイルは『俺はお前より主人に可愛がってもらってんだよ』って言ってるような気がした。
『………』
悔しくて、でも悲しくて。私はシルバーのニューラを手招きした。
「にゅ?」
幸い、シルバーはオーダイルに構ってたみたいで、私がニューラを呼んだことには気付いてなかったみたいだ。
『お前のご主人様は、本当にポケモンが大好きなんだねぇ』
「にゅら!」
嗚呼、凄く嬉しそうだ。
『その輪に、私は入れないのかな…』
「にゅーら…」
ニューラは私の心情を読み取ったのか、慰めるような仕草をとる。
止めて。泣いてしまうから。
涙をぐっと堪える。けど、堪えられない。私は泣き顔を見られないように、ニューラを抱き締めた。ニューラ、苦しかったらごめんね。
「にゅーら」
それでもニューラは、私の腕の中にいてくれる。
お前はどこまで優しいんだ。
主人とは大違いだね。
「ニューラ……って、何してんだお前」
オーダイルを構い終わったのか、シルバーがニューラを呼ぶ声が頭上から聞こえた。
『ニューラ、好きだよ…』
「にゅらっ!?」
突然の告白にニューラは驚いた声をあげる。
「………は?」
お前、アホか。って言われてしまった。
「それに、それ俺のニューラだし」
返せ。ニューラが私の腕から離れる。
『あっ……』
「……お前、何泣いてんの?」
『…泣いてなんか、ない…もん』
「涙出てるけど」
誰のせいだとおもってるのよ、馬鹿!!
……とか言ってやりたいところだけど、後が怖いので言わないことにした。
『なんでもない』
「なんでもなくて泣けるんだな、お前」
『………』
「何があった?」
…なんで、こんな時にばっかり優しいの、君は。
『私たち、恋人だよね…?』
そう聞くと、シルバーは少し顔を赤くした。
「…なんだよ、急に」
『私っ、シルバーに、抱き締めてもらいたい!』
「な…な、な、な、何言ってんだよお前!!」
シルバー、顔オクタンみたいだよ。
『私、シルバーに恋人らしいことしてもらったことないよ!』
「………」
今度はだんまり。
やっぱり、シルバーにこんな要求無理だったのかな。
ごめん、やっぱいいや。
そう言おうとした私の口は、シルバーに塞がれた。
『んむっ!?』
なんと、私はシルバーとキスをしている。
そこまで要求してないよ。
「こっ、これで満足かよ!!」
『…………キスとか…反則』
「声に出して言うな!!!」
シルバーはそっぽを向いてしまった。
『ありがとう。大好き』
また顔を赤くするシルバー。まったく、忙しいな。
とりあえず、シルバーが私のことキスするくらい好きだってことわかったからよしとしよう。
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