待つ


花宮


戸締まりよし。消灯よし。
部活が終わった後の体育館の片付けを終え、最後の確認をしてから体育館の鍵を閉める。


『うっわ、さむ…』


外に出ると、冷たい風が吹いた。先週まではあんなに暑かったのに、今はそんなことを微塵も感じさせないほど、朝晩はめっきり冷え込むようになった。
早く帰って湯船に浸かりたい。

体育館の鍵を職員室に返して、漸く校門を出る。


「遅ぇよ」

『…え』


校門に寄りかかっていたのは、我が部の部長兼監督様だった。


『花宮…?』

「さっさと帰んぞ」


私の姿を確認した花宮は、さっさと歩き出してしまった。


『まっ、待って!』


なんで花宮がここに?遅ぇよってことは、もしかして待っててくれたとか?


『待っててくれた、の?』

「…悪いかよ」


なんと、あの悪童花宮様が、いちマネージャーの帰りを待っていてくれたと肯定したのだ。


『花宮でもそんなことするんだね。ありがとう!』

「ふはっ。お前が下校途中に何か問題でも起こしたらバスケ部の迷惑だからな」


前言撤回。ありがとうなんて言うんじゃなかった。花宮は花宮だ。


『そんなへましませんー』

「どーだか」


でも、こうやって花宮と一緒に帰るなんてしたことがなかったし、こいつとこういう世間話みたいなものはあまりしないから、これはこれで楽しく感じてしまったり。
『今日寒いねー』「最低気温、10度とか言ってたっけ」『うわ、なにそれ!冬じゃん!真冬だよ、真冬!!』「バァカ。真冬はもっと寒ぃよ」
こんな他愛もない話をしながら帰る。花宮といてこんな感情になるなんて思ってなかったけど、なんというか…幸せってこういうことを言うんだと思う。

待つ


131030

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