慰める




凰壮


いつも桃山プレデターが練習している河川敷、今日は練習は休みだったようでいつもの活気がなかった。ただ、人影がひとつ。いや、ひとり?


『凰壮くん…?』


そこにいたのは、三つ子の悪魔こと降矢三兄弟の末っ子、降矢凰壮だった。
いつも三人一組で行動しているから、一人でいるところを見るのは初めてだ。


『凰壮くん!』


私は足早に凰壮くんのもとへ駆けよった。


「苗字」


私に気付いた凰壮くんはボールを蹴ることをやめ、私に向き直った。


『なにしてるの?』

「見てわかんねぇかよ。練習してんだ」

『ふーん。一人で?』


そう私が言えば、声を詰まらせてしまった凰壮くん。


「そうだよ、一人だよ」

『他の二人はどうしたの?』

「いつも三人でいるわけじゃねぇって」


そう言った凰壮くんだけど、ちょっといつもと違う。私は気付いてしまった。


『それにしては、不機嫌そうな顔してるよ?』

「…ちっ」


私にそう言われた凰壮くんは舌打ちをして、ばつが悪そうな顔をした。


「なーんでわかるかな、お前は」


そりゃ、いつも見てるから。なんてことは言えないけれど。


「少し、あいつらといるのが嫌になったって言うかさ」


あいつら、とは虎太くんと竜持くんのことだろうか。


『へぇ、珍しい』

「俺、三人の中でも一番下だからって、いろいろ我慢してるとこあんだよな」


意外。凰壮くんが実は我慢していたなんて。言っちゃ悪いけど、私は凰壮くんが自己中なんていう勝手なレッテルを貼っていた。


『凰壮くんも苦労してるんだねぇ』

「なんだよ。お前に言われるとなんかむかつく」

『酷い』


これでも一応慰めてあげてるつもりなのに。一応ね。


「冗談。慰めてくれてんだろ、ありがとな」


不意打ちで、しかも微笑んでそんなこというから胸が高鳴ってしまった。


慰める

(どうしてくれるんだ)


120701

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