つき様より

「名前さん、どこいくんですか?」

「生クリームきらしちゃったみたいなので買い出しです。
ついでに足りないもの適当に買いに行ってきます。」


今日もワグナリアにお手伝いをしていたら。
名前さんがいつものフロア服にコートを羽織って出口に向かっていた。
聞いてみれば買い出しに行くとのことで。
「俺も行きます!」と言ってみれば、名前さんが「たいしたおつかいじゃないですよ?」との返事。
たいした用事じゃなくてもなんでもいい。
名前さんと一緒にふたりきりになれるなら。
(ついでにいうなら名前さんが心配っす。
ただでさえフロア服短めで、その絶対領域は危険すぎる…!)


「真柴さんと一緒なんてめずらしいですよね。」


いつもつなぎの俺はフロア服のまま、名前さんの横を歩く。
そう言われればあまりふたりきりという場面はすくないかもしれない。
同じフロアだからか、お互いの仕事を補いながらやっているし。

そう考えてみると厨房のほうがよかったな、なんて思う。
料理をとりにいくたびに名前さんと会えるんだから。
(名前さんがフロアだからフロア志望したけど…間違いだったかも。)


「どうしたの、真柴さん?」

「へ?
な、なにがっすか?」

「なんか百面相してるよ。」


名前さんが俺を見てふわりと笑った。
どうやらいろいろ考えていたことが顔に出ていたらしい。
そのかわいらしい笑顔に思わずどきっとする。
ついでに言うなら、すこし背の低い名前さんが俺を見るのに上目使いになるのがかわいい。


「美月さんといい、真柴さんといい…一緒にいるとおもしろいです。」

「…あんなやつと一緒にしないでほしいっす。」

「ふふ、そんな顔しないでください。」


ふてくされながらも横をみれば、名前さんの楽しそうな横顔。
それからぶらぶらしている手が見えた。

なんとなく、その手にふれたくなって。
でも手をつなぐなんてはずかしくてしばらく躊躇う。
すごく近いのに、なぜかここだけ遠い気がして。
手を伸ばしてみてもなかなか届かない。
(も、もうちょい…!)

そう思っていたら。


「真柴さん。」

「うわぁぁっ!」

「えっ!
ど、どうしたの?」


手にふれようとしていたら名前さんに名前を呼ばれて驚いたなんて言うわけにもいかず。
「な、なんか変な虫が飛んでました」なんてしょうもない言い訳。
そんな俺の言い訳にさえ優しく笑ってくれる名前さんが好きで好きで仕方ない。


「その、嫌じゃなかったらでいいんですけど…。」

「はい…?」


頬を赤らめてうつむく名前さん。
何を言うのかどきどきしていたら。


「スーパーに着くまででいいので…。
手、つなぎませんか…?」


俺がつなぎたいと思っていたのが伝わったみたいで。
返事をするかわりにそのちいさな手をつないだ。
思っていたよりも暖かかったのは、名前さんが真っ赤になっているせいか。
それとも真っ赤になっている俺の手が熱いだけなのか。



買いだしデート

(なんか…あれっすね)
(なんですか?)
(俺、いますごい幸せっす)
(…!
わ、私もその…嬉しい、です)
(このまま名前さんとデートしたいっす)
(ふふ、杏子さんに怒られますよ)
(あはは…そうでした
…名前さん、今度の休みにでも…その…デートしませんか?)
(!
する、します!)

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あけおめ企画参加しました。
つき様、ありがとうございました!



120121

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