真弘様より

南沢さんが好き過ぎてツラい。付き合っているわけでも、いつも一緒にいるわけでもないのに、一方的に想うだけでツラいのだ。
サッカー部のエースストライカーで女子にも人気で、私がいくら頑張っても届かない存在なのが南沢さん。想いを告げるなんて、一生掛かっても無理。眺めてるくらいが調度良くて、好きな気持ちが毎日溢れているのが堪らなく幸せだった。

「このチキンめ」
『チキンで悪かったよ…でも近付くだけで失神しそう…!』
「そりゃ万が一上手くいっても付き合えないな」
『倉間たん酷い』
「呼び方キモい」

私より少しちっこい倉間くんの頭を撫でると激しく抵抗された。どうやら可愛い倉間たんも反抗期のようだ(ツンツンしてるから年中反抗期みたいなもんだけど)。いつも私の南沢さん話を聞いてくれるのはいいんだけど、告れとか言われてもただただ困るばかり。南沢さんが半径1mに入ったら嫌でも動悸が激しくなって、顔が真っ赤になってしまうのだ。ぶっちゃけたところそんな調子では、告白どころではない。
まあ告白出来たとしても、断られたら立ち直れないのでやはり無理だろう。断られるとわかっていて告白するのもツラいものがあるし。
『…!倉間くん、近くに南沢さんがいる…!』
「なんでわかるんだよ…」
『だってそういうオーラが来てるもん!ということで私逃げるね!』
「待て待て」

いつも通り逃亡しようとしたが、何故か倉間くんに首根っこを掴まれてしまった。倉間くんあなたなんてことを!南沢さんの前で私が鼻血出してもいいというのか!?この薄情者おおお!!
小さいのに意外と力のある倉間くんと格闘しているうちに、いつも遠くから見させていただいている南沢さんがやってきた。うわ、近い!リアル南沢さん!どこから見てもカッコいい!!

「南沢さん、やっぱり逃げようとしたので捕まえときました」
「ご苦労さん」
「悪いようにはしないでくださいよ。そんときは俺が黙ってませんから」
「するわけないだろ」
『………?』

倉間くんと南沢さんの会話の意味がわからずに硬直してしまう。これから何が始まるんですかね。というか南沢さんは倉間くんに用があるのかな…。
相変わらず倉間くんに首根っこを掴まれたままじっとしていると、倉間くんの手が離れて今度は南沢さんの手が私の腕を掴んだ。そのまま手を引かれて注目の中廊下を歩かされる。え?え?何これ怖い。

『あ、あの…!』
「つべこべ言わず歩く」
『………はい』

怖いいいい!!!南沢さん怖い!クールとかドライとか通り越して普通に怖いよ!!
校舎を抜けたと思ったら今度は裏庭までぐいぐい引っ張られる。ま、まさかリンチってやつか…?南沢さんって前に不良説あったみたいだし、真相究明もまだなんだよね…(ファンクラブの方々も頑張ってるけど)。いやでも私って南沢さんに殺されてもいいとか思ってる人種だからリンチはあまり意味ないかと…。
これから何が始まるかの妄想にも満足したところで、裏庭のかなり奥の方まで来たようだ。南沢さんがこっちを向いた瞬間、思わず身体が跳ねて目を閉じてしまった。やばい、殴られる…!

「………お前なぁ」
『っ!?』

唇に違和感があったので怯えながらも薄目を開けると、南沢さんの顔が目の前に。キスされたと気付くのが遅かったのは、私も南沢さんも目を開けたままだったからだろう。

『みっ、みな、みさわさっ…!?』
「お前が目瞑ったから悪いんだろ」
『えぇっ!?そんな横暴なっ…!』
「…じゃあ、責任取ってやるからこっちこい」

相変わらず意味がわからないものの、責任という言葉に好奇心を覚えてしまった。このまま南沢さんに近付いたらどうなるんだろう、なんて言ってくれるんだろう。どう考えてもこれはおいしい展開だ。
どきどきしながら南沢さんの広げられた腕に近付くと、ちょっぴりいい匂いがして、頭がくらくらする。

「これからずっと、可愛がってやるよ」

上から目線でそう言った南沢さんに抱き締められたら、反射的に頷いてしまう。南沢さんの力に負けないくらい抱き締め返すと、嬉しそうに笑ってくれた。


楽しいことをしよう?
(南沢さんがかなり前から私のことを好きだったと教えてくれるのはまた先の話)

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フリリクありがとうございました!



120208

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