「新刊」デュエリストは風呂屋に集う
 2013.12.25 Wed 22:50
C85新刊です。
オールキャラコメディです。
44p/オンデマ/400円
東ウ59aにて頒布

季節外れの嵐に翻弄されたデュエリスト達は次々に風呂屋に集まって……? 

表紙は毎度のごとく麦流とろ氏にお願いしました。



続きはサンプルです!
十二月二十二日の冬至の朝方。ハートランドシティに突如突風が吹き荒れる。最大瞬間風速三十メートルを記録したこの風は、後に桶屋の風と呼ばれることになる。そしてその突風の後、冬の澄んだ青空が急に黒い雲に覆われ始める。
 これは、季節はずれの大雨に翻弄されたりされなかったりしたハートランド市民が、銭湯で馬鹿騒ぎするだけの物語である。


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ナンバーズクラブ、神代兄妹、天城兄妹、トロン一家あたりがわちゃわちゃするお話。
時系列はアストラルがいなくなる前からバリアンとの全面戦争に突入する直前あたり。

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何の脈絡もない八つのプロローグ

  午前八時半 神代家 

 季節外れの雨が降っている。冷たい大地にしとしとと染みこむ様を見て、凌牙は溜息を吐いた。雨は嫌いだ。どうしようもなく、わけもなく憂鬱になる。
 璃緒と出かける約束をしていたが、そんな気も失せたので二度寝と洒落込むことにする。璃緒にはあとで詫びれば済むだろう。
 外ではこれまた季節外れの雷が鳴っている。その音をBGMにして、うとうとと再び凌牙は眠りの世界に入り込んでいく。

午前十時五分 ハートランドホテル前 

 やたらと空が暗い。空を見上げて、ミハエルは眉を寄せた。これから折角、友人の家に遊びに行くというのに、なんて天気だろう。ただでさえ空気が冷たくて白い息を吐いているのに。朝方の雷と雨は一応収まっているようだが、まだまだ降るぞという空の色。風も不穏なうねりを上げている。
 傘を腕にかけ、手をすり合わせて身震いを一つ。
 何か忘れているような気分に捕らわれたが、気のせいだろうとミハエルは一歩踏み出す。できれば雨の降らないうちに遊馬のところに行きたかった。

  午前十時十三分 どこか 

 弟がデュエルディスクを忘れて行った。遊びに出て行ったのに。その事に気がついて、トーマスはホテルを慌てて飛び出した。物を掴んで走ること十分、はてと彼は立ち止まる。
弟はどこへ遊びに行ったのだ。そして、ここはいったいどこだ。
白い息を吐きながらトーマスは思案する。しかし、周りは見慣れぬ景色。さらに、雷鳴が轟き始める。
 一体、自分が何をしたというのか。
 報われない思いの彼の肩に、ポツリと雨粒が落ちてくる。それはみるみる勢いを増し、大粒の雨が地面を叩き始める。
「おいおい、傘ねぇぞ。勘弁してくれ」

  午前十時二十七分 九十九家

「うわー。降ってんな。しかもすげぇ雨じゃん」
 遊馬が窓際で苦い声を上げている。アストラルも窓に寄ってみれば、激しい雨が地面に叩きつけられている。
「これは、すごいな。雨というものには慣れたが、これほどのものは初めてだな」
 感心するアストラルに、相槌を打っていた遊馬が急にはっと息を飲む。
「どうした」
「この雨で、Vの奴、うちまでこれっかな。もう出てる時間だよな」
 そう言うなり、彼はアストラルの制止も聞かずに部屋を飛び出す。
 アストラルも頭を抱えながら渋々ついてゆく。「今さら君が行っても、しょうがないだろうに」
 そのぼやきは遊馬の耳には届いていない。それもいつもの事で、慣れっこになってしまったと思いながらアストラルも雨の中へと飛び出した。

  午前十時五十一分 商店街西側
 
 ししゃもが特売になっていた。
 今日の夕飯はかぼちゃの煮つけと焼いたししゃもで決まりにしよう。買い物に付き合ってくれる約束だった凌牙が二度寝から起きてこなかったので、味噌汁には玉ねぎを入れてやるのだ。
 そんなことを考えながら買い物を済ませ、スーパーを出ようとした璃緒は、外を見て溜息をつく。
「やんでるうちにって思ったのだけど」
 外は激しい雨だ。傘を取り出し、起きてこなかった凌牙を恨みながら、璃緒は雨の中歩きはじめる。

  午前十一時五十六分 小学校正門

 激しい雨により、大雨警報が出た。冬のお泊まり合宿ということで昨日今日と二泊学校に泊まるはずが、楽しいお泊り会は二日目の午前中で中止になってしまった。
クラスメイトが次々迎えに来た親と帰ってゆく。ハルトと数人が玄関ホールにまばらに残るのみだ。
ハルトは下駄箱の前に腰掛け、雨を眺めている。
 兄はどうやら仕事中らしく、連絡が取れない。最近は以前の師匠であるクリスと共になにやらこそこそやっているので、きっとそれだろう。
 こんな時くらい、それを放りだして来てくれてもいいのに。ただの幼い子供としてそう思う自分と、兄のしていることはすごく大事なことなのだと知る、カイトの弟としての自分の間でハルトは揺れる。
「お兄さんとは連絡ついたか?」
 そう気を使ってくれる担任に、もうすぐ来てくれるから大丈夫と返しながら、膝の上に頬杖をつく。
 そのうち、その視線に耐えられなくなって傘を持って外に出た。
「もう来るらしいから、帰ります。先生、さよなら」

  午前十二時 九十九家

 九十九家にどやどやとナンバーズクラブの面々が集まり始める。今日はナンバーズクラブの忘年会と称して、遊馬の家でお泊り会が企画されている。
 明里は濡れた少年少女にタオルを渡してやり、出てこない弟を呼ぶために二階へ向かう。
「ちょっと、アイツなんでいないのよ」
 空の一室を見て青筋を浮かべた彼女をなだめながら小鳥も少しむくれている。
 遊馬の部屋に通された面々は濡れた髪を拭きながら、部屋の主の帰還を待っている。

  午後三時 ホテルの一室

「あーあ。ミハエルは出かけちゃうし、トーマスは帰ってこないし、クリスも仕事だし、つまんないよ」
 トロンがぼやく。ソファでごろごろだらだらしていた彼は不意にあることを思い出し、机の引き出しを開ける。そこには一枚のナンバーズ、とミハエルの電話。
「ミハエルも折角遊馬のところに行くなら持って行ってくれればいいのになぁ、もう。あーあ電話忘れていってるし。つまんないなぁ」
 引き出しを閉じかけた彼は、カードに手を伸ばし、その姿に良く似合う子供らしい笑みを浮かべる。
「そうか。これを僕が届ければいいんだ」





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あっちで騒動、こっちで騒動。わたわたと大騒ぎの年末。デュエリスト達は無事に嵐を乗り越えられるのか?
そんな感じの44ページ(表紙込)です。

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