拝啓、初花。(沖千転生パロ序章)
(貴方がいない空に色などない)

(貴方が呼ばない名に意味などない)


(貴方が、貴方が、貴方がいなければ)


「ちづ…る、泣かないで」

「や…嫌、嫌です総司さん…!!!」


握る手が冷たい


絡まる指が

力を失う


みるみる熱は奪われる

愛しい

愛しい

ただ一人の人ー


羅刹の毒は癒えても彼を蝕む病は愛しいこの人を連れていってしまうのだ


困ったように歪む瞳が閉じれば終わる


私の世界を彩る貴方が
いない世界が

始まるー


雪深い冬の宵闇に

永久の別れが

静かに幕を

開けたのだー…


「そ…うじさん、」

愛しいあの人が亡くなった翌年、私は流行り病で倒れた

霞む視界の先
呼ぶ声がする



(千鶴)


優しいあの人の声


(いい子だ)

優しく髪を撫でる
暖かな指の感触


(一人で頑張ったんだね)

「…っ、そ、じさ、そーじさっ…」


頑張ってなんて、ない

優しい貴方を心配させて
しまうのに

私はどれだけの涙を流したのだろう


命を絶つ事を耐える代わりに

何度貴方の手紙を読み
涙しただろう


命を絶てば悲しみからは
解放されるのだろう


でも

きっと貴方に逢えなくなる


何度も貴方が護ってくれた私の魂の灯を消す事だけは


耐えたのだ


でも

どうか


来世こそは


病にも
動乱にも


流されず


愛しい貴方と


生きていきたい

どうか
どうか

叶いますようにと

瞼を閉じる


愛しい貴方に
逢える時代を
夢見てー……


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