ストレス発散のために模擬戦やランク戦をしたから、とりあえず気は済んだ。人が少なくてB級隊員相手に勝負していたから全勝だった。折角だったら1対5とかもしておけば良かったと後悔する。普段あまりそういう機会とか無いし。


「あぁ…この後どうしよう」

「咲羅先輩ー!」


この声は……振り返らなくてもわかる。そしてそのまま背中に抱きつかれ、ぐぇっと変な声が出る。

絶対笑われるだろうから他の人達(特に公平・米屋・太刀川さんの3人辺り)に聞かれていなくてよかったと思う。


「何かね駿クン」

「よく見ないで俺だってわかったね」


驚いたような口調で言った。ボーダーの人なら、ある程度は声でわかるし。

あと勢いつけたまま突撃してくるのは、もうそろそろ止めてくれないかな?さすがに痛くなってきたぞ。


「で、どうかしたの?」

「模擬戦しよ!」


うん。だろうと思った。大体口を開けば模擬戦しか言わないのだここの人達は。相変わらず予想を裏切らないなぁ。でも私も戦い足りていないから、言われてすぐに承諾した。


「いいよ。10戦にしとく?20戦やる?」

「飽きるまで?」

「いいけど…何故疑問形で言ったの?」


いつもながら元気だなぁ……とか思いつつ断らない私も負けてないか。

公平や米屋に言わせると、どうやら私は戦闘バカの部類に含まれているらしい。そういや最近、迅さんにも言われたわ。正直太刀川さんと同じ扱いとか、解せぬ。



「じゃどっちかがギブアップするまでねー」


それぞれブースに入る。A級同士だからか周りが少しザワザワしていたけれど、とりあえず無視だ無視。





結果…何戦したとか勝敗の数とか途中から数えるのをすっかり忘れてた。多分私の方が多かった。そう思いたい。


「疲れたー」

「まぁ、流石に疲れたね」


ソファーに寝そべっている駿とその近くに両手に飲み物を持って座る私。もちろん2人分。いくらなんでも1人じゃ飲みきれない。

よくよく考えてみれば、学校終わってからず―――っと本部に居たわけだし。そりゃ疲れるか。


「今何時かな………うゎぁ」


時計の針は7時ちょっと前を示していた。一体どれだけ夢中になっていたのやら。

今日は模擬戦を早めに切り上げて、溜まっていた大量の課題をどうにかするつもりだったというのに。そして提出期限は明日。でも一切手をつけていない白紙の状態。


「家帰ったら秀次に助けを求めよ」


うん、そうしよう。

きっと冷ややかな目線で『ふざけるな』って、一蹴されるだろうけど。電話じゃ顔見えなくても何となくわかる。


「ま、帰るか、駿はどうする?」

「うーん…もう少しだけ残ってる」

「そっか。ほどほどにして帰りなよー」


緑川にジュースを渡してから、別れを告げ
咲羅は本部を後にした。

外に出るとほぼ同時に電話をかける。なるべく早くかけた方がいいだろうから。


「あ、もしもし秀次?」

『何の用だ』


色々言いながらも電話に出てくれる所とか意外と三輪は優しいと思う。残念な事になかなか同意は得られないのだが。


「あのね、明日t((」

『断る』

「ちょっ!まだ何も言ってないって!」

『どうせ「明日提出の課題を手伝って」とでも言うつもりだったんだろう』


うぐぅ図星だから言い返せない…まさしくその通りに言おうとしていた。でも毎回全部言う前に断るのはやめて。


「課題は自力でやるから諦める。だからテスト勉強の時は手伝ってくれる?」

『全部終わらせたらな』

「約束ね?忘れないでよ?」


絶対やらないと思っているだろう。よしっ、こうなったら意地でも終わらせてみせるんだから!咲羅は小さく気合いを入れた。

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