book_Haunt me


幸福な女の子とツバメの話(オスカー・ワイルド的な意味で)
死ネタ

【※】この本の表紙は蝋引き加工をしております。1つ1つ手作業のため透明感や蝋のノリに多少の違いがありますが中身は同じです。


【本文】

「外に出たらね、唄を歌うの」
特に彼女がやりたがったのは、そんな事だった。

「元気だった頃ね、教会で聴いた歌がきれいだったの。きっと練習すればじょうずになると思うの。いつか聴かせてあげるわね。音楽好きなんでしょ?」
「ああ。聖歌以外なら」
「うん、大丈夫。きっと歌えるわ。あなた言ってたじゃない?歌劇の唄が素敵だったって。その唄を練習するの」
「楽しみにしてる」
「うん!」

この話をするときだけが、私の知る限り唯一彼女がその見た目通りの幼さを見せる瞬間であり、そして彼女の数ある持ち物の中で、絶対に手放したがらない一冊の楽譜を眺めては、うつかはあれをこれをと、夢をみるように語り聴かせてくれた。


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