BOOK_越冬


ナルシャル短編2本と序章、終章の4部構成。
序章 朝のロンド
短編 ハートとウッドベースによる砂糖菓子のナーサリー
短編 弦楽器と猫のための協奏曲
終章 夜のためのソナタ

全体的にイチャイチャめ。

【本文見本】
大人しく目を閉じた瞬間、胸の上にずっとくる重さに肺の空気が音をたてて漏れた。
ゆっくり顔の上までかけていた毛布をずらすと、ほとんど予想通りの光景が瞳の中に飛び込んできた。
毛布の上、腹と胸の間に鎮座する我が家の姫君白猫クリスとその背に乗ったもう一人のお姫様、四つの視線が僕を見下ろす。

「ねえ、おなかへったって」
「君が?」
「そういうイジワルは好きじゃないの」
「……クリスがそう、君に?」
「おしゃべりはできないけど。でもずっとお皿を見てたわ」
「ああ」
「ねえ、なんでおなかがすくの?」
「何でだろうね」
「私はすかないからわかんないの」
「燃費が良いのは素敵な事だよ。このご時世にね」
「そうなの?素敵な事なら嬉しいわ」

何もわかってないだろう彼女は、良かったねと言ってクリスの頭を楽しげに撫でる。どうにも燃費の悪いお姫様の方は小さな陶器手を少し煩わしそうにしながら耳を小さく振った。そんな程度の抗議が通じる子じゃないんだけど。


(弦楽器と猫のための協奏曲)


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