1話
キーンコーンカーンコーン

新学期が始まって最初の日。
青葉城西高校では昼休みのチャイムが鳴り響いていた。
待ちに待った昼食の時間。
及川徹は弁当箱を抱えて3年5組の扉を勢い良く開けた。
「岩ちゃーん!お昼ですよー!」
「うるせーグズ川。」
飛びつかんばかりに他クラスへと入ってくる及川に容赦無い一言を入れるのは岩泉一。
及川の幼馴染みでチームメイトだ。
「なになに朝練ぶりに及川サンに会えて嬉しいって?もしかして照れちゃっ…ギャア!!!痛い!痛いよ岩ちゃん!!」
「またやってるよ。」
「及川はほっといて飯食おうぜ。」
そんなコントを繰り広げていたら、いつの間にかあと2人長身の男が増えていた。
言わずもがな及川と岩泉のチームメイト、花巻貴大と松川一静である。
「クラス、バラバラになっちゃったねー。」
「そうは言っても結局4人集まるのな。」
「そんなの今更ジャン。」
「マッキーもまっつんも来たんだね!早くご飯食べよう!」
「だな。」
この4人はルックスのせいか身長のせいかそれとも強豪バレー部のレギュラーというポジションのせいか、校内でもかなり目立つ部類にいる。
そんな4人が岩泉の机周辺で集合して弁当を食べる姿は昼休みの教室とは言えどかなりの存在感を放っていた。

しかし5組の空間にはもう1つ存在感を放つ4人グループがあった。

「ぎゃっははは!それ本気で彼氏に言ったの?愛子まじやべえ、うける!」
手を叩いて友人の発言に爆笑するのは目鼻立ちのはっきりした顔に明るい茶髪をポニーテールにした井上葵。
「仕方ないじゃん苛ついたんだし。絶対許さん。それより麻友は彼氏はどうなったの?」
彼氏への発言で笑いを誘ったミルクティーブラウンの髪をふんわりボブにした童顔、山本愛子。
「あれ、言ってなかったっけ。一昨日別れてやりましたー!」
こちらは明るいアッシュを綺麗に巻いた美人顔の大石麻友。
「は?あんなイケメンイケメン騒いでたのに?」
「だってあいつ超きもいんだよ、毎日鬼電うるさいし女友達と遊んでるって言っても信じないし頻繁に位置情報送れって言ってくるし。」
「100年の恋も冷めたと。」
そしてもう1人。
「そんな大層なもんでもないけどね、おーいずっと突っ伏してるなまえちゃん生きてますかー。」
『んー…1人だけクラス離された上に自販のイチゴミルク切れてたから死にそうでーす。』
机の上に投げ出した腕で眠そうな目を擦りながら顔を上げた少女。
大きくてぱっちりした二重瞼に薄い唇、白すぎる肌にピンクがかった髪をおろしたみょうじなまえ。
発言も行動も派手でSNSや横の繋がりで知名度の高いこの4人は他校から青城4姉妹と呼ばれる程有名だったりする。
その中でもなまえは3人から末っ子のように可愛がられ、ついた異名は青城の妹。
本人は謎がっているが、皆その異名には納得らしい。
「それな、全員が一緒になるとは思ってなかったけどなまえだけ離れるとは想定外。」
「おまえどんな悪さしたんだよ。」
『してないし!』
「てかなまえほんと好きだよね、イチゴミルク見たらなまえ思い出すもん。」
「あはは!それ分かる。そんだけ摂取してたら血液イチゴミルクになってんじゃね?」
『その血液が不足してるんで今日はもうダメ…午後サボるね。』
「マイペース過ぎんだろ。」
「悪い子なまえちゃんのほっぺはこれかなーうお、もちみたい。」
『いひゃい!いひゃいよ葵!』
ぎゃあぎゃあわいわい。
騒ぎ続ける彼女たちは凄く元気なようだ。

「4姉妹今日も元気だねー。」
「あの中の3人同じとか岩泉のクラス騒がしそー。」
「ニヤニヤすんな松川!」
「いーじゃん岩泉。おかげでおまえのクラス、顔面偏差値跳ね上がってんだし。」
「はあ?」
「それを言うなら及川のとこにも妹ちゃんがいるじゃん。」
「そうなんだよね!及川サンとみょうじちゃんで偏差値上げまくっちゃってごめんねマッキーまっつん!」
「なんかうぜえ。」
「よし及川歯ぁ食いしばれ。」
「ぎゃあ怖いよ2人とも!」
「おまえらさっさと教室帰れ!」
「うわ、あと5分で授業始まる!」
「またね皆、また部活で!」
ウィンクをかまして教室を出て行った及川にキャー及川クーンなんて聞こえたような気がしたが気のせいだ。
岩泉のため息は既になまえの居なくなった4姉妹の笑い声にかき消された。


- 2 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ